<まちかどエッセー・物江麻衣子>イラストレーターという仕事

[ものえ・まいこさん]イラストレーター、デザイナー(屋号ico.)。墨汁やマニキュア、ドライバーなどを画材とし、東北放送製作「続・仙台弁かるた」や新聞・雑誌の挿絵、広告イラストを制作。現在、FMなとりで「イラストレーターico.のpiece of NATORI」放送中。1985年、宮城県名取市閖上生まれ。福島市在住。

 人が一生で就くことができる職業は数が知れている。
 私は、その職業ならではの苦労ややりがい、どのように自分の生活を支えてくれているのかを、身をもって知りたくなってしまう。そのため、これまでさまざまなアルバイトをしてみたが、私のような未経験者が就ける仕事には限りがあった。
 そう思っていた私だが、案外イラストレーターという職業を通じて、そんな体験ができているのかもしれない。クライアントは広告・出版業界に限られがちだが、描く対象は実に豊富だ。
 例えば、書籍の表紙イラスト。小説の舞台設定は、同じものは二つとしてなく、作者は時代背景や文化を丹念に調べ上げ、文字に起こす。私はいち早くその世界をのぞかせていただき、作品の「顔」を作っていく。
 ノウハウ特集の挿絵も多い。料理研究家の家飲みレシピ、医学博士が薦めるココナツオイルの効用、エステティシャン直伝の美のツボ。
 農家さんと一緒に土だらけになって、松の植樹方法を描いたこともある。農家さんには苗について教えてもらい、林業組合の方々のスマートな植えっぷりを間近で見る。実際に現場に行かないと分からないことも多い。
 こけし職人さんとキャラクターこけしを作ったこともある。私が絵付け担当だ。家に届いた段ボールには出来たてのこけしがぎっしり。その時の木の香りと言ったら! こけしが生き生きしていた。
 普通なら話すこともできないような業種の方に、私が理解するまで根気よく教えていただき、図案にしていく。そんな方々に絵を見ていただいた際、喜んでくれたり、「ありがとう」と言われたりすると、こちらがありがたくて仕方ない。
 ある意味、これも職業体験のようなもので、しかも個別指導だから贅沢(ぜいたく)な話だ。そうした異業種の方々や現場とつながるたび、全ての仕事が巡り巡って社会が成り立っていて、私もその中の一部なのだと実感するのだ。
(イラストレーター)


2018年07月23日月曜日


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