<まちかどエッセー・物江麻衣子>市民が交流するラジオ

[ものえ・まいこさん]イラストレーター、デザイナー(屋号ico.)。墨汁やマニキュア、ドライバーなどを画材とし、東北放送製作「続・仙台弁かるた」や新聞・雑誌の挿絵、広告イラストを制作。現在、FMなとりで「イラストレーターico.のpiece of NATORI」放送中。1985年、宮城県名取市閖上生まれ。福島市在住。

 名取市のコミュニティーFM「エフエムなとり なとらじ801」で、「piece of NATORI」という番組を務めてもう1年半になる。番組表には「市民持ち寄り番組」が幾つかあり、その一つを引き受けることになったのだ。
 番組の企画、取材、構成、収録、宣伝。パーソナリティーであっても、編集以外は全部自分でやる。大変な仕事量だが、もともとラジオに携わってみたかった私にはまたとない機会だし、何より少しでも自分の古里に貢献できるなら、という一心で作っている。
 番組ではさまざまなことにチャレンジした。東北楽天ゴールデンイーグルスの岸孝之投手をはじめ、名取に縁のある方に出演してもらったり、生まれ育った閖上を舞台にしたラジオドラマを制作したりした。小説家志望の友人が何度も名取に足を運んで原作を書いてくれ、語り師と劇団員さんに朗読と脚本を依頼した。
 番組のメインテーマは「あなたの心の中にある名取」の投稿。投稿は私がイラストに描き下ろし、ポストカードにして投稿者にプレゼントする。
 名取だけでなく、震災に遭った街は、現実には変わっていく風景があり、人々の心の中には変わらない思い出や風景があるのではないか。
 それは、どこにでもある何げない風景だったりもする。そういった風景は写真など形に残る記録はとても少ない。町の神社一つ描くだけでも苦戦した。でもだからこそ絵にして残せたら、と考えたのだ。
 ある回では、孫たちと遊んだ思い出を投稿してもらった。個人的な思い出を描くのはもちろん難しいが、自分もおばあちゃんと遊んだ時を思い出して描いた。
 その後、イラストを受け取った投稿者から電話があり、「どこかで見られていたのかと思うくらい、場面も孫もそっくりでした! ありがとう」と喜んでもらえたのだ。相手が見えなくても、確かに「伝わった」と実感できた。
 目には見えない絆やつながりを感じ取る・発信できるのがラジオの良さで、だから私はラジオが好きだ。(イラストレーター)


2018年08月06日月曜日


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