<まちかどエッセー・物江麻衣子>ほどよく使うSNS

[ものえ・まいこさん]イラストレーター、デザイナー(屋号ico.)。墨汁やマニキュア、ドライバーなどを画材とし、東北放送製作「続・仙台弁かるた」や新聞・雑誌の挿絵、広告イラストを制作。現在、FMなとりで「イラストレーターico.のpiece of NATORI」放送中。1985年、宮城県名取市閖上生まれ。福島市在住。

 ユーチューバー、インフルエンサー。「自分の好きなことを仕事にしよう!」と、会員制交流サイト(SNS)を駆使してビジネスを成功させた人は声高に語る。そんなことが誰にでも実現可能な世の中となった。しかし私からすれば、胸がざわついて仕方がない話題である。どうにもSNSが苦手なのだ。
 旅先や記念すべきイベントでも、私はほとんど写真を撮らない。数年前に妹と台湾に行った時は写真を4枚しか撮っていなかった。心から感動することは、心で記憶する。写真や日記に残すと、私は残したという満足感のせいで、肝心の内容はすっぽりと抜けてしまう難儀な性格だ。
 それに、主に個展の告知や仕事紹介などの営業ツールとしてSNSを利用しているが、実のところ誰かに届いているという実感が薄い。「いいね」の数、フォロワー数、コメントで、それらが届いたかどうか判断するしかないのだ。
 近年は、あまり物に価値を置かない風潮になってきた。若者は車の所有やマイホーム願望もない。今は真意も分からないネット上の数字やつながりを過信・重視している気がする。
 SNSは本来、人と人との交流を手助けするためのネット上の便利なサービスのはずだが、「SNS疲れ」という言葉も耳にする。学校や会社の連絡網までがSNSを活用しているのだから、SNSが自分の世界と切り離せないものと感じてしまうのは無理もない。
 そんなことを思う隣で、母が親戚や旧友宛てに、私のイラスト展の案内状を書いている。
 拝啓から始まり、時候の挨拶を交え、丁寧に展示の内容を説明し、敬具で締める。母は字がきれいだ。手書きには、情報以上のものが込められる気がする。
 案の定、展示会に来てくださるお客さまは、母からの案内を見て来たという方がとても多いのだ。素晴らしい営業力である。
 こうして見ていると、SNSは単なる交流手段の一つなのだと思えて安堵(あんど)する。いま一度、自分とSNSとのあり方について見直したい。
(イラストレーター)


2018年08月20日月曜日


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