<まちかどエッセー・物江麻衣子>まちの美術室

[ものえ・まいこさん]イラストレーター、デザイナー(屋号ico.)。墨汁やマニキュア、ドライバーなどを画材とし、東北放送製作「続・仙台弁かるた」や新聞・雑誌の挿絵、広告イラストを制作。現在、FMなとりで「イラストレーターico.のpiece of NATORI」放送中。1985年、宮城県名取市閖上生まれ。福島市在住。

 今年の春先、姪(めい)が中学生になった。ランドセルなど思い入れのある用具を整理した姉は、私に絵の具を差し出した。姪の名前が書かれた、ずしりと重い12色の絵の具セットと白いパレット。そのあまりの使用感の無さに衝撃を受けた。
 確かに私は絵を描く仕事だからありがたいのだが、この絵の具は姪に使い切ってほしかった。もう絵は描きません、とも言われたようで何だか寂しかった。
 小中学校の時間割で、美術や図画工作の時間は1週間で2時間程度。これらの科目を学校以外で教わる機会はあまりないのではないか。国数英などは学校外では塾という頼もしい存在がある一方、美術・図画工作の教科がある塾は聞いたことがない。
 子どもたち自身がものづくりをしたり、多様な画材に触れたりする機会や場所は、絵画教室や、イベント的に開催されるワークショップくらいかもしれない。
 私は今でこそイラストレーターとして日々絵を描いているが、美術教育は学校での授業くらい。美大に入ったものの絵は一切描かない学科だった。そのため私は独学で、画材も昔使っていた習字道具だったり、マニキュアだったり。画材になりそうなものをいろいろ試した。
 社会人になってからは、アクリル絵の具や日本画セットなど、画材屋で気になる画材を買っては使ってみた。画材や技法はそれぞれに面白い。しかし、個人でこのように試みるのは苦労も伴う。画材はそう安くない。それ以上に、やはり誰かにちゃんと教わりたい。
 カルチャースクールにも通ったが、生活に余裕がないと厳しいと思った。子どもならなおさらだ。学費はもちろん、塾に通っていれば月謝を払い、さらに絵画教室も、と気軽に払える家庭はどのくらいだろう。
 もしかしたら、学校や家の外(地域)に子ども食堂ができたように、美術室もまた地域に根ざす存在なのかもしれない。プロアマ関係なく、ものづくりの面白さを知る大人たちが活躍するはずだ。「まちの美術室」なんて、どうだろうか?
(イラストレーター)


2018年10月22日月曜日


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