<まちかどエッセー・米田公男>心の「あく」?

[よねだ・ひろおさん]1955年広島市生まれ。墓石、モニュメントなどのデザイン設計と施工を行う有限会社しんせい代表取締役。終活カウンセラー。一般社団法人シルバーパートナーズ会員。「仙台発・大人の情報誌 りらく」に2018年6月号まで10年間、コラム「亡くなるまでの智恵とその後の家族のために」を連載。宮城県利府町在住。

 奈良市の薬師寺に大谷徹奘(てつじょう)というお坊さんがいます。昭和の名僧高田好胤(こういん)管主の下で17歳から修行した方で、楽しい説法をします。徹奘住職は、仏教とは人が生活をするために必要な「心を磨く学問」、お経はそのガイドブック「人生の『るるぶ』」ですと語ります。
 先日、「お釈迦(しゃか)様の教えを現代に活用する試み『発句経』に学ぶ」という講話を聴き、翌日は住職指導の写経もしました。気仙沼みちびき地蔵堂に隣接した自習室のピーンと張り詰めた空気の中で、般若心経に向かいます。静かに筆を進める緊張の時間の後、和やかなお顔の住職と昼食をいただきながらお話をしました。
 「米田さんは石屋ですね。この前関東の石材店経営者と話した時、最近はお墓を建てるより『墓じまい』の方が多くなってね!と言ってました。米田さんもですか?」と聞きます。
 「そうですね、墓じまいのお話が来た時はお客さまの家族や親族の状況も聞き、ご先祖のためにもお墓をなくすのが良い方法だとお互いに分かった上で注文を受けますので、今のところはお墓を壊すよりは、新たに建てる方が多いですかね」
 徹奘住職は「そうですか、それはいいですね」と言われ、こう続けます。
 「あるご家庭で、子どもたちに迷惑を掛けてもいかんからお墓を崩して永代供養をすると父親が言い出したところ、息子さんがものすごい形相で『何バカなこと言っているの! お墓がなくなったら俺たちは何を拝めばいいの、どこで先祖と話せばいいんだ。ちゃんと墓地は守っていくから余計な心配するな』と言ったそうです。子どもにたしなめられ、お父さんは涙を流して息子の心根に感謝したという話を聞きました」
 そして「思った以上に若い方は宗教に柔軟に対応しているのかもしれません。高度成長期を過ごした人たちは、教育の中で宗教を遠ざけるようにされてきました。心の底にあった宗教心を抑え込まれ、そのちぐはぐした精神から『あく』のようなものが出ている。そのあくを出し切れば、日本はもっと美しい国になります」と話されたのでした。
(石材店経営)


2018年11月19日月曜日


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