<まちかどエッセー・若蝸_美>30年来の憧れの人

[わかやなぎ・よしみさん]東京都三鷹市出身。朗読ユニット100グラード主宰。TOHOKU360通信員、荒浜のめぐみキッチン活動メンバー。宮城県内のコールセンターで十数年勤務、第55回全国電話応対コンクールで優秀賞受賞。現在は仙台市のIT企業に勤務。仙台市若林区在住。41歳。

 憧れの俳優・女優、アーティスト、作家、画家。「これを作った方に直接お会いしたい」というクリエイターさんが何人もいる。その中でも、自分が一番長いこと憧れているのは、とあるバンドのリーダーさん。その活動を30年来(途中いろいろあって離れつつも)追い続けている。活動休止もメンバー交代もなく、毎年ライブツアーを続けていて、年2回仙台でも必ずライブがある。
 そのバンドに人生で初めて参加したライブは、なんと1階2列目の席だった。しかも上手側(ステージ向かって右手)で、私の憧れの人の立ち位置目の前。私とステージ上の方、その距離、約3メートル。ファンの間では【初ライブは前列が当たる】という言い伝えはあったけど、まさか本当になるとは。
 その後、ライブではそれ以上のよい席にはめぐり合えていない。握手会やサイン会は当たったことがない。改めて「憧れ」という言葉の意味を調べる。【到底実現できそうにない、まずもって無理な願い】を表すそうだ。
 数年前、とある俳優兼画家の方の握手会に参加した時のことを思い出す。この方も憧れのクリエイターさんの一人で、二十数年追っている。サインを頂いて、握手して、その間、十数秒。一言くらいは声をかけられる時間はあった。ずっと画面越し・雑誌越しに見てきた人が目の前にいるのに、伝えようと思っていた言葉もあったのに、何も言えなかった。文字通りアワアワして何も言えなかった。
 どんなに舞台の場数を踏んでいたとしても、憧れの人の前に出ると自分は舞い上がってこうなってしまうんだ、と心底理解した。
 自分がこれから残りの人生で世界的に有名になって、彼ら彼女らと同じ立場になって会える、という可能性は限りなくゼロに近い。であれば、やっぱり自分から動くしかない。自分のできる範囲で、ライブに参加し音源を買って応援する。掲載されている雑誌を買う、出演しているテレビ・ラジオを拝聴する。そういう距離が精神衛生上一番良さそうだ。次回ライブは2階席。さて、どんな服を着て行こうか。
(朗読ユニット100グラード主宰)


2019年05月20日月曜日


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