<まちかどエッセー・長沼広>蛙よ、大海を知ろう

[ながぬま・ひろしさん]1952年山形市生まれ、東北大医学部卒業。東北大病院に勤務し、米国のロックフェラー大に2年間留学。帰国後、仙台市立病院に勤務し、定年退職。現在は仙台赤十字病院勤務。

 他の業界も似たり寄ったりかもしれないが、医療業界は意外に世界が狭い。仕事も遊びも、同じ顔触れということが多い。仕事を始めて一人前になるまでは、脇目も振らずにやるしかない。一生懸命に仕事に没頭して、いつの間にか自分の世界で充足してしまう。
 「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」と言われても、空は高くて青いのだから、井戸の中も存外居心地はいいものだと思ってしまう。
 外の世界、新しいことに目を向けづらくなる。「見なくて結構」とかたくなになる。そうして頑固おやじが出来上がる。若い頃は頑固おやじに立ち向かっていたはずが、いつの間にか自分もそうなってしまう。それはごめんだと思っていた。
 35年ほど前、留学する機会があり、いろいろな分野の方、さまざまな国の方と接する機会を与えられた。その頃の海外生活は未知との遭遇そのものだった。帰国後、異業種交流会に参加する機会があり、入会した。もう30年以上たつ。各業種1人という原則の中で、さまざまな職種の人と接し、またそれに関連するいろいろな勉強会にも参加した。その中で今の私に大きな影響を与えてくれた言葉がある。
 それは3Cである。「Chance(機会)」「Choice(選択)」「Challenge(挑戦)」の頭文字である。
 機会があれば、やるかやらないか選択する。ひとたび選択したら、あくまでも挑戦してゆく。これを繰り返していたら、仕事も順調に進み、趣味の世界も広がった。それまでの自分が少しずつ変わっていく実感が得られた。
 現在は3Cから4Cに変えている。最後のCは「Change(変化)」である。
 井の中の蛙だって、外に出たいと思い続けると、不思議と機会はやってくる。その機会は、出るか、出ないかの選択を迫る。井戸の壁を上る選択は、挑戦を強いる。自分で選んだことならば、挑戦も楽しいものになる。
 年を取れば取るほど、新しいことへの挑戦は難儀になる。しかし、初めから諦めたりせず、これからも4Cを抱えて更新し続け、楽しく生きていきたい。
(病理医)


2019年11月25日月曜日


先頭に戻る