<まちかどエッセー・斎藤尚美>30年の節目

斎藤尚美[さいとう・なおみ]さん 1972年仙台市生まれ。東北生活文化大生活美術学科(絵画専攻)卒。市内3カ所で造形アトリエ「アートフィールドくうか」を運営するほか、絵画制作や羊毛フェルト作家として活動する。

 造形活動を通して子どもたちと触れ合い始めて、ことしでちょうど30年になります。
 はじめは学生ボランティアとしてショッピングモール内の造形広場で、親子対象に季節の工作を提供するお手伝いをしていました。
 美術系大学を卒業した後は画塾のスタッフとなり、2歳〜小学6年生の子どもたちに絵画や粘土制作、工作を指導。夕方からは美大受験の学生さんたちへのデッサンや、社会人への油彩・水彩教室指導者のアシスタントを経験しました。
 その後、絵本と木のおもちゃ専門店に勤める傍ら、造形アトリエを立ち上げました。東日本大震災後に独立し、ことしで7年になります。
 自分の幼稚園時代を思い出すと、友達と遊ぶことよりも、暗い園舎の中で一人黙々と「お絵描き帳」に向き合う自らの姿が浮かんできます。
 人見知りでしたが寂しいというよりは、何かをつくり出す衝動のようなものが原動力となって、白い紙を埋めていく作業を楽しんでいました。
 中学、高校時代には、良き恩師との出会いもありました。迷わず美術の道へ進み、大学では教職課程も学びました。
 30年という節目に、ふと「なぜアトリエという空間を?」と自分に問い掛け原点を振り返ってみます。小学校時代、近所に住むおばさんが自宅の一室を、文庫として開放していました。
 四方の壁にびっちりと絵本や児童書が並ぶ本棚があり、真ん中のテーブルで、ときどき折り紙や簡単な工作を教えてくれました。本当に楽しかった。そこには絶対的な安心感があり、とても居心地良く過ごしていたことを覚えています。
 31年目を迎えるに当たって幼い日の自分に思いをはせ、物づくりを通して子どもたちの日常に寄り添い、今度は私が安心感を与えられる居場所としての存在でありたいと、切に思っています。
(造形教室主宰)


2019年11月18日月曜日


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