<まちかどエッセー・向井康夫>渡り鳥と小鳥とカタクリと

 3月に入り、暖かくなったと思ったらまた冷え込む日もあり、三寒四温という言葉を実感する季節になりました。
 今の時期は旧暦で「啓蟄(けいちつ)」と言われていて、虫たちが冬越しから目覚め、動き始める時期とされています。
 先日、秋田県の八郎潟に赴く機会を得ました。まだまだ寒さ厳しい八郎潟の田んぼでは、食事をしている渡り鳥、マガンの群れを観察することができました。
 真冬の時期、日本に渡ってくるマガンの大部分、十数万羽が、宮城県北部の伊豆沼周辺に集まることが知られています。
 このマガンたちは、季節が進むにつれ、伊豆沼周辺から秋田県の八郎潟周辺、北海道の宮島沼周辺に移動していき、初夏には北極圏に渡って、北極圏の氷が溶ける夏の間に繁殖します。
 北極圏の短い夏が終わるころ、その年に生まれたヒナたちは親と同じくらいの大きさまで成長し、南に向かって渡りを始めます。
 日本にやってきたマガンたちは冬の間、昼は田んぼでお米を食べ、夜は沼で休む生活をして、渡りのためのエネルギーを蓄えます。ハクチョウの仲間や他のカモの仲間の多くも、冬の間マガンと同じく、田んぼでお米を食べています。
 日本と北極圏の往復で約8000キロを毎年行き来する冬の渡り鳥の壮大な生活と、その生活を稲作という農の営みが支えていること、そして異なる地域の田んぼが異なる季節にその渡り鳥の生活を支えていることを、八郎潟でマガンを観察し改めてイメージできた、とても貴重な旅行でした。
 このスケールの大きい渡り鳥の生活を想像しつつ、いつもの散歩道をのんびり歩いていると、シジュウカラやヤマガラ、カワラヒワなど小鳥たちのさえずりが聞こえてきました。道の脇に「ばっけ(フキノトウ)」が顔を出していて、近所の雑木林の林床ではカタクリが葉を広げていました。
 まだまだ寒い日があり、虫たちの活動が活発になるにはもう少し時間がかかりそうですが、いろいろなスケールで季節が着実に進んでいるのを感じています。移りゆく季節の知らせを、皆さまもぜひ探してみてください。
(むかい*いきもの研究所代表)


2020年03月16日月曜日


先頭に戻る