<まちかどエッセー・渋谷敦子>寒ダラに集う60代女子会

渋谷敦子[しぶや・あつこ]さん 1956年にかほ市生まれ。山形大人文学部卒業。名取市在住。2008年まで市民による舞台芸術裏方集団「未来工房なとり」を主宰。05年より「みやぎ聞き書き村草子」、15年より「みちのく櫂(かい)草子」で聞き書き活動

 友人からの年賀状に「コレステロールと闘ってます」とあった。「私も。それをさかなに今度じっくりとね」と返しておいた。そこへ山形市内で居酒屋を営む友人が、今が旬のタラを食べに来ないかと言う。それではと話は早い。山形県庄内地方在住の友3人を誘って山形市に合流した。
 今年一番の寒波という日であったが、「年に一度は日本海の寒ダラ」と、昼間の宴会となった。
 タラは捨てるところがない魚。白身のほか、タラコはいり煮に、白子は酢の物よりはわさびじょうゆがおいしい。肝は白菜や大根などと肝あえにしたり、身やアラと一緒にみそ味の汁にするなどして食べ尽くす。
 この日店主は、タラの身を昆布締めにした。昆布のうま味で甘さが引き上げられて何ともおいしかった。
 3人とは高校の部活仲間で、顔をそろえるのは久しぶり。学校名をもじり「サケトウ」といわれた諸先輩の薫陶を受け、それぞれ酒豪ぶりを発揮していたが、それも今は昔。体の不都合も増えて、出る話はあちこちの痛いところ自慢と、お酒にまつわる失敗話だ。
 何より高齢の親を持ち、皆介護の真っ最中だった。世に言う「80.50問題」の上を行く世代なのだ。
 一人は定年を迎えた後、夫君に先立たれていることもあり、故郷に戻って来ていた。父親の介護と世話に忙しい日々を送っている。
 また一人は、母親をみとって2年たった今でも、どうあればよかったのかと自問する日々だという。
 わが家のことも考え合わせると、介護には教科書も正解もないのだと思う。
 迷いの多かった10代という時期を共有した仲間との語らいは、自分の原点を見るような心持ちになった。
 春の訪れを告げるフキノトウの天ぷらや、ハタハタの一夜干しをあぶった一品もうれしかった。食材を干したり漬けたりと下ごしらえにいとまなく、店主がこんなに料理好きだったかと思うほどだ。
 山菜は、日当たりの良い雪解けの庄内の山が宝庫だそうだ。「今度はタケノコだね」と、皆で合点した。
 フキノトウで毒消しをし、飲んでしゃべって毒もついでに吐いた。あ、でもコレステロール値には責任持てないからね。
(みやぎ聞き書き村会員)


2020年03月23日月曜日


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