<まちかどエッセー・向井康夫>山笑い、鳥歌う

向井康夫[むかい・やすお]さん 1976年大阪府阪南市生まれ。大阪府立大大学院修了。農学博士。京都大、東北大で助教を務めた後、仙台市に「むかい*いきもの研究所」設立。市民に身近な自然を楽しく学んでもらう活動を続けている

 この時期は旧暦の清明。全てのものが清らかで、生き生きとする頃とされています。野原では、ナズナが随分伸びてペンペン草らしい姿になり、ヒメオドリコソウやホトケノザに加えて、カラスノエンドウやノゲシの花を多く見掛けるようになりました。普段活動をさせていただいているみどりの杜では、白菜が立派な花を咲かせており、野山ではカタクリが見頃を迎え、木々は少しずつ若葉を付け始め、山の活気が感じられる時期になりました。
 野山で草木を観察しながら耳を澄ますと、ウグイスのさえずりが聞こえてきました。季節の始めは「ほーーほきゅ…」みたいにちょっと不器用な鳴き声だったのが、最近は「ほーーほけきょ!」という見事な声に変わっていました。ウグイスの恋の季節の到来です。
 さて、鳥の鳴き声を人の言葉に置き換えて表現することを「聞きなし」と言って、古くから親しまれてきました。ウグイスの鳴き声は「法、法華経」と聞きなされてきました。田んぼ地域に行くと、空の高いところからよく聞こえてくるヒバリの早口の「ちーちゅるちーちゅるちーちゅる」というさえずりは、「日一分利取る日一分利取る」と聞きなされています。
 先日見掛けた、夏の渡り鳥のツバメの「ちゅちちゃちゅちちゃ、じゅるるるる」という鳴き声も、「土食って虫食って渋ーい」と聞きなされることが多いです。
 人によって鳥の声の聞こえ方が違っていると思いますし、聞きなしの表現の仕方もいろいろだと思いますので、どう聞こえたかをみんなで話し合うのも楽しいと思います。また、聞きなしには、音の表現だけでなく、おのおのに民話が伝わっていることも多いので、昔の人は鳥の声にどんな物語を付けたのかを調べてみると楽しいと思います。
 野山や草原、田んぼ地域などいろんなところで、生き物の活動の気配が色濃くなってきています。
 なかなかお出掛けしにくい状況ではありますが、窓を開けて自然の音に耳を傾けたり、お庭や道端、おうちの中など、無理なく出掛けられるところで、身近な自然を楽しんでみていただけるとうれしいです。
(むかい*いきもの研究所代表) 


2020年04月13日月曜日


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