<まちかどエッセー・向井康夫>田んぼとカエル

向井康夫[むかい・やすお]さん 1976年大阪府阪南市生まれ。大阪府立大大学院修了。農学博士。京都大、東北大で助教を務めた後、仙台市に「むかい*いきもの研究所」設立。市民に身近な自然を楽しく学んでもらう活動を続けている。

 昼間は暑いと感じることもある時期になってきました。この時期は旧暦の立夏。次第に夏めいてくる頃で、青々とした緑、爽やかな風、心地よい五月晴れの季節、とされています。
 家の近くを散歩すると、春の早い時期の草花に代わって、ワスレナグサやヘビイチゴ、ハルジョオンやシロツメクサの花を見る機会が増えてきました。歩きながら耳を澄ますと、オオヨシキリの「ぎょぎょしぎょぎょし」という声や、カッコウの声、ツバメのさえずりを聞くことができる季節になりました。
 5月上旬に水が張られた家の近くの田んぼでは、とてもたくさんのトウキョウダルマガエルとニホンアマガエルが鳴いています。雨の降った夜には、大合唱と言っていいくらいの鳴き声で、とってもにぎやかです。鳴いているカエルはみんなオスで、メスを呼ぶために鳴いています。
 多くの田んぼは5月上旬に水が入れられ、5月中旬ごろに田植えが行われ、以降ずっと水が張られているのですが、6月末から7月ごろになると、イネの根を強くし、開花を促すために、一度水を抜く「中干し」という管理がなされます。中干しは1週間から10日ほど続き、田んぼの表面がひび割れるくらい強く乾燥させます。この中干しまでの間に、オタマジャクシからカエルになって上陸しないと、田んぼで繁殖するカエルたちは生き抜くことができません。トウキョウダルマガエルのオタマジャクシの期間は1カ月余りですので、繁殖時期が遅くなってしまうと、中干しまでに上陸できなくなってしまいます。この時期のカエルたちの鳴き声は、生き残りをかけた恋の歌、と言っていいと思います。
 田んぼにはカエルの他にも、ゲンゴロウの仲間やトンボの仲間など、たくさんの種類の虫たちが棲(す)んでいて、この虫たちの大部分も、カエルと同じように中干しまでに幼虫の期間を終える生活のサイクルを持っています。ですので、田植えから中干しまでの期間の田んぼは、とても多くの生きものがどんどん育っていく水辺です。
 お近くに田んぼがある方は、ぜひ田んぼの中をのぞいてみてください。
(むかい*いきもの研究所代表)


2020年05月18日月曜日


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