<まちかどエッセー・向井康夫>水辺の夏の声

向井康夫[むかい・やすお]さん 1976年大阪府阪南市生まれ。大阪府立大大学院修了。農学博士。京都大、東北大で助教を務めた後、仙台市に「むかい*いきもの研究所」設立。市民に身近な自然を楽しく学んでもらう活動を続けている。

 多くの田んぼで田植えが終わり、夏らしい強い日差しを感じる日が少しずつ増えてきました。家の近くを散歩すると、ハルジョオンやイタドリ、ギシギシのように、勢いのある草花が目立つようになりました。夜になると、家の明かりにコガムシやガガンボの仲間、ケラなどの昆虫が飛んでくる季節になりました。知人からは、ツバメやシジュウカラの繁殖の知らせが届き、季節が進んでいるのを感じています。
 この時期は旧暦の小満、命が次第に満ち満ちていくころ、とされています。
 先日、自宅で作業をしていると、家のすぐそばからはと時計の音のような「ぱっぽー、ぱっぽー」という声が聞こえてきました。カッコウの鳴き声です。外に出てみると、家のすぐそばの電線の上に止まり、少し上向きに上げた尾羽をゆっくり左右に揺らしながら鳴いていました。
 カッコウは、別の種の鳥の巣に卵を産みつけ、その鳥を仮親としてヒナを育てさせる繁殖の仕方(托卵(たくらん))をする鳥です。托卵する相手は、モズやオオヨシキリ、ホオジロなど、農村でよく見られる鳥たちです。カッコウのメスは産卵途中の仮親の巣を選び、巣の中の卵を一つくわえ取って自分の卵を一つ産みます。カッコウの卵は仮親の卵より早く孵化(ふか)し、ヒナは巣の中にある仮親の卵を背中で押し上げ、巣の外に落としてしまいます。こうして、一羽だけになったヒナは仮親に育てられます。カッコウはハトと同じくらいの大きさの鳥なので、ヒナが育ってくると、仮親より大きくなっていきますが、仮親はエサを与え続けるそうです。子育てを別の種類の鳥に任せる繁殖の戦略、とても興味深いと感じながら、カッコウを観察していました。
 その後、田んぼの中に目を移すと、カイミジンコの仲間やタマミジンコなどの動物プランクトンがたくさんいるのが観察できました。水底ではゴマフガムシやコガムシ、チビゲンゴロウなどの水生昆虫も動き回っています。水の中も陸の上もとてもにぎやかです。
 身近なところでもいろんな生きものの行動を見ることができるこの時期、ぜひ生きもの観察を楽しんでみてください。
(むかい*いきもの研究所代表)


2020年06月01日月曜日


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