<まちかどエッセー・向井康夫>稲作とアキアカネ

向井康夫[むかい・やすお]さん 1976年大阪府阪南市生まれ。大阪府立大大学院修了。農学博士。京都大、東北大で助教を務めた後、仙台市に「むかい*いきもの研究所」設立。市民に身近な自然を楽しく学んでもらう活動を続けている。

 日中は汗をかくくらいの日が次第に増えてきましたね。田んぼでは小さかった苗が少しずつ伸び、茎を増やして、鮮やかな緑が田んぼを覆いつつあります。この時期は旧暦の芒種(ぼうしゅ)。イネや麦など、穂の出る植物の種をまく頃、とされています。
 家の近くを散歩すると、マツヨイグサやユウゲショウの花を見掛ける機会が増えてきました。農道を歩くと、オオヨシキリやカッコウの鳴き声、飛び交うツバメ、あぜ道で休むカルガモなどが観察できます。田んぼの中に目を移すと、ミジンコやカイミジンコなどのプランクトンに加え、アキアカネの幼虫が見つかりました。
 アキアカネの幼虫は、この時期、田んぼの中でミジンコや他の水生昆虫を食べてどんどん成長します。そして、6月下旬から7月上旬の田んぼの中干し(イネの根を強くし、開花を促すために、田んぼの水を一度抜く管理)の頃に、イネの茎などに登って羽化します。羽化した成虫は、高い山に移動して餌を食べ、稲刈りが行われる頃に、成熟して田んぼ地域に戻ってきて、稲刈りが終わった田んぼの表面に卵を産みます。この卵は眠った状態で冬を越え、翌年田植えが終わってしばらくしたころに孵化(ふか)します。田んぼで卵と幼虫期間を過ごし、成虫は山で生活した後、秋に田んぼに戻って繁殖して一生を終える、稲作と同調した生活サイクル。アキアカネを見つけると、稲作という農の営みと山の環境がつながっていることを意識できて、うれしくなります。
 田植えから中干しまでの期間、田んぼでは本当にたくさんの生きものを観察することができます。私の著書「絵解きで調べる田んぼの生きもの」は、そんな生きものを楽しくじっくり観察し、種類を調べていただくために書きました。田んぼの生きもの観察にご興味ありましたら、手に取って見ていただけるとうれしいです。また、6月下旬から、田んぼや公園での生きもの観察会も再開することになりました。生きもの観察会については、むかい*いきもの研究所のホームページに情報を掲載していますので、ご興味ありましたらご覧いただければと思います。
(むかい*いきもの研究所代表)


2020年06月15日月曜日


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