<まちかどエッセー・向井康夫>田んぼとイナゴ

向井康夫[むかい・やすお]さん 1976年大阪府阪南市生まれ。大阪府立大大学院修了。農学博士。京都大、東北大で助教を務めた後、仙台市に「むかい*いきもの研究所」設立。市民に身近な自然を楽しく学んでもらう活動を続けている。

 梅雨に入り、朝夕少し冷え込む日が続いていますね。田んぼではイネの背が高くなり、茎を増やして、鮮やかな緑が田んぼを覆いつつあります。この時期は旧暦の夏至。一年で最も日が長く、夜が短い頃、とされています。これから夏の盛りへと、暑さが日に日に増していく季節です。
 先日、泉区の田んぼ地域を散策している時に、とてもたくさんのヒバリがさえずっているのを見つけました。大豆畑のどこかに巣があるようです。足元に目を向けると、上陸して間もないニホンアカガエルやアマガエルの子ガエルがたくさん見られました。さらにあぜ道へ歩みを進めると、小さいバッタがぴょんぴょん跳ねています。コバネイナゴの幼虫です。
 コバネイナゴは田んぼでとてもよく見られるバッタです。田んぼなどでイネ科の草を食べています。コバネイナゴの幼虫は、初夏から夏の時期に田んぼやその近くで見られ、秋までに羽化して成虫になります。成虫は、秋に交尾し、土の中に卵を産んで、その年のうちに死んでしまいます。その後、卵の状態で冬を越え、翌年田んぼに水が入った頃に再び幼虫が出てきて、田んぼやそのまわりで成長する、1年の生活サイクルを持っています。
 このような田んぼの一年と同調した生活サイクルは、コバネイナゴだけでなく、カエルや赤とんぼなど、田んぼやその近くで見られる生きもので多く見られます。
 日本で稲作が始まってから、長く見積もっても3000年くらい。稲作が始まる以前には雨や雪解けなどで自然にできた水辺で暮らしていた生きもののうち、田んぼの管理に合った生活サイクルの生きものが、田んぼで生活するようになった、と考えられています。これらの生きものは、毎年同じ場所に同じ時期に水が入り、イネが植えられ、収穫される稲作という人間の活動を、うまく利用して生きています。
 田んぼの中では、成長したアキアカネの幼虫や、トウキョウダルマガエルのおたまじゃくし、コオイムシやミズカマキリの幼虫などが見つかりました。田んぼの中干しまでのにぎやかな様子を観察できた楽しい一日でした。
(むかい*いきもの研究所代表)


2020年06月29日月曜日


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