<まちかどエッセー・前川美穂>故郷が教えてくれたもの

[まえかわ・みほさん]1986年仙台市生まれ。弘前大で農学・生物学を学び、会社では微生物管理の仕事を経験。震災を機に地元仙台の実家に戻り、家族と「すずめ農園」を立ち上げる。お米を育てながら農体験イベントや発酵の講座を行う。現在は鍼灸(しんきゅう)師も務める。泉区在住。

 私は、あまりお米が好きではありませんでした。高校生のときには、ご飯は太ると思って、おかずばかりを食べていました。会社勤めで1人暮らしをしているとき、お米中心の食生活、特に玄米を食べるようにしてみると、それまで悩んでいた体調の不良がすっかり良くなってしまいました。実家が米の兼業農家をしていて、お米はタダ同然、あって当たり前のように思っていたので、こんなにもありがたいものだったか!と深く気付いた体験でした。
 震災時には、食べ物はあるのかと心配して実家の様子を聞くと、お米はあるし、畑の野菜も保存していたものがあるから食べ物には困らないとのこと。ご近所さんと食材の物々交換もして、助け合っていると教えてくれました。本当の生きる力というのは、大地から食を生み出す技術と、助け合いのコミュニティーなのだと教えられました。
 地元に戻り、たくさんの人に助けられながら、農園や食を伝える活動をさせてもらいました。高校を卒業して以来、久しぶりに実家に帰ってみると、こうじをつくってみそを仕込んだり、ウメを拾ってきて梅干しを漬けたり、フキやタケノコを採ったり、季節に合わせた農作業と食の行事・楽しみがありました。子供のころには気付かなかったけれど、こんなにも豊かな生活が、身近にあったのかと思いました。テレビで見るような「田舎暮らし」ではないけれど、気取らない昔からの営みが、これからも残っていてほしいと思います。
 「大地に立つ者、倒れねぇ」。青森でよく通った温泉の脱衣所に、大きく書かれていた言葉を今でも思い出します。全ての農家さんに敬意と感謝を込めて。
(すずめ農園代表)


2020年07月13日月曜日


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