<まちかどエッセー・前川美穂>心掛けたい無垢な伝え方

前川美穂[まえかわ・みほ]さん 1986年仙台市生まれ。弘前大で農学・生物学を学び、会社では微生物管理の仕事を経験。震災を機に地元仙台の実家に戻り、家族と「すずめ農園」を立ち上げる。お米を育てながら農体験イベントや発酵の講座を行う。現在は鍼灸(しんきゅう)師も務める。泉区在住。

 素直な自己主張の言葉が、お互いを尊重するコミュニケーションに大切なのだと、子どもたちから学んだ出来事がありました。
 私には、2人のおいがいます。兄が4歳、弟が2歳のとき、2人を連れて、近くの公園に遊びに行きました。ブランコが二つ並んで空いていたので、一つずつブランコに乗って遊び始めました。
 少しすると、知らない男の子がやって来て「ブランコ貸して〜」と言ってきます。「分かった〜」と言いながら、おいのブランコを後ろで押しながら、私は考えていました。「今ブランコ始めたばかりだけど、どうしよう。一つのブランコを交互に使えばいいのかな。おいのどちらかにブランコを降りてもらおう」
 そう考えているうちに、4歳のおいがブランコを漕ぎながら言いました。「今始めたばかりだから、もっと遊びたいんだ。もう少し時間かかるけど、その後なら貸してあげられるよ」。それを聞いた男の子は、「分かった! 別のところで遊んでからまた来るね。教えてくれてありがとう!」。そう笑顔で言って、去っていきました。
 私は、おいの素直な自己主張・伝え方に驚くと同時に、自分が無意識に相手の感情を予想して、自分の意見を後回しにしようとしていたことに気が付きました。
 自分の今の状況や望む状態を伝えることなく、すぐにブランコを貸さなくては、と考えたのです。それは、待たせたら、男の子ががっかりするだろうと勝手に察したからでした。一方でおいは、始めたばかりという現状を伝えた上で、もっと遊びたいと自分の意見を伝えています。さらに、その後なら貸してあげられると提案をしています。
 自分がどうしたいのかを素直に伝えたときに、相手がどのように受け取るのかは、相手次第で、自分ではコントロールできないものです。それなのに、必要以上に相手のことを察して、素直な意見が言えなかったり、断れなかったりすることがあります。自分の中の価値観で相手の意図や感情を測ってしまう、ある意味で自分勝手な思考なのかもしれません。まずは自分の状況と意見を率直に伝えることが、適切なコミュニケーションの入り口なのだと、子どもたちの無垢(むく)なやり取りから教えてもらったのでした。
(すずめ農園代表)


2020年09月14日月曜日


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