<まちかどエッセー・前川美穂>土着信仰に出会う

前川美穂[まえかわ・みほ]さん 1986年仙台市生まれ。弘前大で農学・生物学を学び、会社では微生物管理の仕事を経験。震災を機に地元仙台の実家に戻り、家族と「すずめ農園」を立ち上げる。お米を育てながら農体験イベントや発酵の講座を行う。現在は鍼灸(しんきゅう)師も務める。泉区在住。

 2019年1月、私は初めて海外に行きました。場所は、アフリカにあるジンバブエという国です。そこには、ムビラという民族楽器を使って儀式を行う土着の信仰があります。今から2年前にムビラを習い始め、雨音のような、美しく響く音色に夢中になっていました。それで、この楽器がどのように儀式で使われているのかを、知りたくなったのです。
 日本人のムビラの先生が企画したツアーですが、ジンバブエの空港に集合のため、1人で初めての国際線を2回乗り継ぎ、24時間かけてジンバブエに向かいます。緊張の連続で、不安になりながら、ようやくたどり着きました。
 聖地とされる田舎の村で、精霊(先祖霊)に祈る伝統的な儀式に参加することができました。夜が更けて、ムビラ奏者たちが演奏をしていると、偉大な精霊を宿しているらしい霊媒師が、私たち日本人に向かって話し始めました。
 「あなたは、あなたの力で、ここ(ジンバブエの聖地)に来たのではない。精霊に導かれて来た。自分の力や賢さだけで、達成できることは少ない。精霊に感謝をしなさい」。自分の勇気と行動で、ここまで来たと思っていた私は、その言葉にハッとしました。ジンバブエに来ることも、今までの人生も、なにか大きな力に導かれていたのかもしれない思うと、謙虚な気持ちになり、自然と目に見えない存在に感謝する気持ちが湧いてきました。今まで「導かれている」という感覚を意識したことがなかったことに気が付いたのです。
 実家には仏壇と神棚があって、日常的に手を合わせます。神社やお寺にもお参りに行きます。ですが、私は信仰というものをよく分かっていませんでした。ジンバブエでの体験は、人間にとって、信仰が本来どういう役割を持つのかを、考えるきっかけになりました。
 私はいつも、何かしらの不安を感じていました。その不安は、心の余裕を奪い、迷いや悩みをたくさん生み出していたように思います。「導かれている」という意識を持つと、「人生を信頼する」という大きな安心を感じることができました。穏やかで安らぎある、平安な心の在り方に出会えたのだと思います。
(すずめ農園代表)


2020年10月05日月曜日


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