<裁判員裁判・東北の10年>法曹三者トップインタビュー(上)仙台高裁長官 秋吉淳一郎さん(63)/「公判中心」追求続ける

[あきよし・じゅんいちろう]東大法学部卒。82年任官。最高裁上席調査官、仙台地裁所長、東京高裁部総括判事を経て、17年4月から現職。東京都出身。63歳。

 刑事裁判に大きな変化をもたらした裁判員制度は、21日で施行10年となる。「見て聞いて分かる審理」への試行錯誤は続き、制度運用を巡る評価は今も揺れ動く。東北の法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)のトップに現在の課題と将来の展望を聞く。(報道部・横山勲)

 −裁判員裁判の審理をどう見る。

<理想とずれ>
 「10年で格段の進歩を感じるが、被告人質問や証人尋問の際に捜査段階の調書を再現したいという意識が検察、弁護側に働きがちなのが課題だ。せっかく事前に争点を定めているのに、必ずしも争点に関係ないことまで質問・尋問事項とする向きがある。裁判所が理想とする姿とのずれを感じる」

 −裁判員選任手続きへの出席率が低下している。

 「不健全な状態で、問題意識を持っている。呼び出し状への返答がない場合の再送達の取り組みなど、引き続き工夫が必要だ。裁判員をやってみたいと思ってもらえるような制度広報もしていく。裁判員経験者に具体的な経験を語ってもらう場や、中高生など若い人をターゲットにした広報を積極的に展開したい」

 −公判前整理手続きも審理も長期化している。

 「審理日程は、ある程度の余裕をもった方が裁判員に納得してもらいやすい面もある。問題は公判前整理手続きの長期化。審理を分かりやすくするために争点を定め、必要な証拠の採否と審理の大枠を決めるのが目的だが、詳細な整理でかえって長くなっている。そもそも何のための手続きなのかという認識を検察、弁護側を含め共有を図らなければらない」

 −裁判員裁判の控訴審の在り方は。

<一審重視に>
 「制度開始を契機に『事後審』に徹するべきだという方向性に大きく変わっていった。控訴審での事実取り調べが制限的になり、一審との心証を比較する審理ではなくなった。量刑を含め、一審重視の方向性になっているのは確かだ」

 −遺体写真など刺激の強い証拠の取り扱いには議論もある。

 「裁判所は必要性を厳格に審査している。どうしても必要なものは白黒化やイラスト化を要請している。具体的に何を立証したいのかという点で、証拠の採否を巡り検察、弁護側と裁判所の議論がぶつかるのは、ある程度やむを得ない」

 −施行10年で思う裁判員制度の意義は。

 「かつての刑事裁判は膨大な証拠を裁判官が持ち帰って読み込んで心証を取る『精密司法』『調書裁判』と言われていた。それが法廷で真実を明らかにする公判中心主義が徹底されるようになり、理想の刑事裁判の姿を追求し続けている。それでも、たかだか10年。もっと安定的に制度を運用していく必要があるし、一人一人の裁判官は終わりのない自己研さんを積まなければならない」


2019年05月20日月曜日


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