<せんだい進行形>街歩きツアーじわり人気 特定地域をじっくり探究

佐藤麹味噌醤油店を紹介する岩村さん(左から2人目)
藤崎前で末永さん(左から4人目)の説明を聞く参加者ら

 行動範囲を絞った地域密着型の街歩きツアーが、仙台市を中心に広がっている。観光名所を訪れる一般的なツアーとは違い、特定の地域の奥深い魅力に触れられることが人気の理由だ。安価な料金で少人数向けのツアーを販売する旅行会社も登場し、初心者でも専門家のガイドを受けながら気軽に楽しめる。
(報道部・高橋公彦)

■こうじの歴史 住民ガイド

 「仙台藩祖・伊達政宗の時代、荒町はこうじの専売権を与えられて栄えた。夏はこうじを作れず、みそや酒を造った」
 10月下旬、若林区の荒町商店街であった街歩きツアー。宮城、福島両県の参加者3人に、及川酒店の12代目及川龍二さん(43)が街の成り立ちを説明する。同店も先代までは酒造りをしていた。名残が社名の「及川酒造店」にうかがえる。
 ツアーは荒町のゲストハウス「ホステル キコ」の岩村和哉マネジャー(27)の案内で、約2キロの行程を2時間かけて回った。
 蔵元「森民酒造本家」で酒を味わった後は、1603年創業の佐藤麹味噌醤油(こうじみそしょうゆ)店を訪問。岩村さんは「最盛期は70を超えるこうじ店がひしめいていたが、現在は同店だけ」と紹介。2種類のみそを食べ比べ、往時に思いをはせた。
 この日の終着地は仙台初のクラフトビール醸造所「穀町ビール」。今野高広代表(50)は森民酒造本家で醸造の現場を学び、2017年に独立した。参加者は併設の店で乾杯し、ビール造りに懸ける今野代表の言葉に耳を傾けた。
 福島市の会社員浦山美穂さん(26)は「通り掛かったことはあるが、ゆっくりと巡ったことはなかった。地域に詳しいガイドのおかげで商店主と交流でき、魅力的な店がたくさんあることが分かった」と話した。
 ツアーは仙台市の観光事業の一環で、キコが地域商品開発のマイティー千葉重(仙台市)のサポートを受けて企画。来年2、3月にも実施する。岩村さんは「仲介役として荒町の内と外をつなぎ、こうじや酒にまつわる歴史を伝えたい」と意気込む。

■安価・少人数向け販売も

 旅行会社のたびむすび(仙台市)は、地域の歴史や文化に詳しい住民らがお気に入りスポットなどを案内する街歩きツアー「仙台ふららん」を専用ホームページを通じて販売している。1回90〜120分で定員10〜20人。料金は2000円から設定し、食事代など実費を加算する。
 テーマは定番の地域や歴史のほか、食や工芸などさまざま。国分町の老舗飲食店などを訪れる「はしご酒」、段丘や谷地といった高低差のある地形を楽しむツアーもある。
 11月下旬には、創業200年を迎えた藤崎の歴史をたどるツアーを実施。青葉通まちづくり協議会と連携し、同社の170年史の編さんを担当した元社員末永直之さん(73)と共に創業の地などを巡った。
 仙台ふららんは週末を中心に年間50回程度開催。2016年4月から18年末までに約1200人が参加した。参加は仙台市近郊からが9割で、7割以上を女性が占める。
 たびむすびのスタッフでガイドも務める吉川理香さん(45)は「『ブラタモリ』などテレビ番組の影響で、身近な場所にある新たな発見を楽しむような観光に注目が集まった。歴史や地形に詳しいガイドにはファンやリピーターが付いている」と明かす。
 街歩き観光の成功例として知られるのは、長崎市が06年に開催した「長崎さるく博」だ。街を歩きながら歴史や文化を味わうイベントで、期間中(4〜10月)の観光客数は355万人、経済波及効果は865億円に上る。07年に「長崎さるく」名で通年事業化した。
 長崎さるくをきっかけに全国で街歩きを観光商品として提供する事例が広がり、仙台市も15年に市民ガイドの養成事業を実施。ガイドが作成したツアーの販売をたびむすびが担うことになった。
 稲葉雅子社長は「地域資源を活用した体験型観光のニーズがある一方、価格が安く手間のかかる街歩きツアーは大手旅行会社にはできない。観光客を呼び込んで交流人口を増やすと同時に、住民が地元を知り、愛着や誇りを持ってもらえるようにしたい」と語る。


2019年12月20日金曜日


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