岩手の企業深刻 感染者ゼロでもコロナの影響 減収、8割超える

経営者や求職者が続々と訪れる盛岡公共職業安定所

 新型コロナウイルスの感染者が全国で唯一、確認されていない岩手県でも企業活動に大きな影響が出てきた。外出自粛に伴う利用客や収益の減少で、県内事業所の解雇対象者は見込みを含めて170人超となっており、事態は深刻さを増している。

 東京商工リサーチ盛岡支店(盛岡市)は4月23日〜5月12日、県内企業に経営への影響をインターネット上で尋ねた。回答のあった242社のうち、4月の売り上げが前年同月を下回った企業は8割を超えた。
 売り上げが前年の8割未満に落ち込んだ企業は59社で、3月の影響を調べた前回調査から24社増えた。
 企業活動への影響が既に出ているとしたのは160社。業種別では製造業が38社で最も多く、サービス業32社、卸売業30社と続いた。
 影響の内容(複数回答)は売り上げや来店者の減少が110社、出張の延期・中止が98社だった。盛岡支店の佐藤正彦課長は「徐々に企業への影響が顕在化してきている」と説明する。
 雇用状態も悪化の傾向にある。岩手労働局によると22日現在、解雇や解雇見通しの従業員は27事業者で175人に上る。各職業安定所(ハローワーク)の情報提供や、助成金相談に訪れた経営者から聞き取った。
 業種別にみると、製造業が最多の9社55人で、生活関連サービス業が3社41人、宿泊・飲食業が5社35人。15日の調査から1週間で5社59人増えた。
 岩手労働局の担当者は「雇用調整助成金の相談件数は落ち着いてきたが、解雇しなければ耐えられない事業所が増えている。緊急事態宣言の解除で状況は変わると思うが、予断を許さない状況だ」と分析した。

◎退職金で生計維持「このご時世では…」

 大船渡市の鮮魚店に勤務していた男性(43)は4月中旬、社長から店の休業と解雇を告げられた。
 「今月いっぱいで全員を解雇する。こちらの経営が至らなくて申し訳ない」
 新型コロナウイルスの影響で客足が大きく減っているとは感じていた。急きょ従業員が集められた席での社長の発言。男性は「休業は予想していたが、まさか解雇されるとは思わなかった」と肩を落とした。
 東日本大震災後、陸前高田市で仮設店舗で鮮魚店を経営していた。だが仮設店舗の利用延長ができず、2017年3月末に廃業。事情を知った知り合いに紹介され、3年前から大船渡市の鮮魚店に勤めていた。
 男性は「解雇はあまりにも急だなと思った。でもこんな状況だから仕方がない」と受け入れる。
 退職から間もなく約1カ月。今は退職金と失業保険で生計を維持する。「同じような業態の店で働きたいが、このご時世ではどこも採用どころではない。腰を据えて働き先を探すしかない」と、自分に言い聞かせている。


2020年05月29日金曜日


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