Web日誌

 

実名主義

 6月28日付の河北新報によると、総務省がインターネットの匿名性を排し、実名利用を促進させたいと考えています。実名や実名に準じる呼び名を使うブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)を小中学校の教育の中で活用しながら、ネット利用の「健全化」を実現するのだそうです。

 確かにブログやSNSでは、実名や実名に準じる呼び名を使いながら情報を交換します。匿名によるリスクが相対的に少ないのは間違いありません。しかし、利用の実態を詳細に見れば、ブログを使って情報を発信する人が必ず実名を明かしているわけではありません。むしろ匿名の方が多いかもしれない。知人に紹介された人だけに参加資格を与えることで、一種の安心を確保するSNSの場合も、顔も知らない人と簡単に気安くなるのは例外に近いはずです。

 仕事や暮らしの中で既に顔見知りの人とニックネームを使って、より深くて軽やかなコミュニケーションを楽しんだり、知人が知人を紹介する仕組みにうまく乗って、人の輪を広げるのがブログやSNSの醍醐味です。特にSNSを活用すれば相手との距離が縮まり、親密さが一気に増すことがあります。だからこそ個人情報やプライバシーの扱いはより厳密でなければなりません。ブログもSNSも短期間のうちに急激に普及した仕組みであり、問題があるとすれば顕在化するのはむしろこれからです。

 総務省の取り組みは、ネット特有の匿名性をIT利用の障壁ととらえ、実名による「健全な利用」を促進させようとするもののようです。インターネット社会には大きな可能性とともに、危険な側面もあり、それらをどうコントロールするかが大きな課題です。こうした危険を回避する手立てとして、ネットモラルの醸成を目指して教育現場で息長く取り組むことに異論はありません。

 ただ、匿名がすべて悪いという発想に陥るのは危険だし、ブログやSNSだけに解決策を求めるのも短絡的です。ブログやSNSの登場を待つまでもなく、ネットを健全に活用するITセンスも社会には広く存在します。ネット社会の否定的な側面にとらわれるだけでなく、そうしたITセンスの担い手の発掘、育成に力を入れ、ネットをうまく活用するノウハウを社会全体で共有する必要があります。実名主義をいくら強固にしたところで、その裏をかいくぐる暗い流れが完全に途絶えることはないでしょう。(20050628)