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<複式学級の可能性>主体的な学びを先取り

手作りのおもちゃを説明する2年生の国語の授業。奥にいる1年生は自主学習に取り組む=宮城県丸森町の耕野小

 児童が少ない2学年で構成する小学校の複式学級=?=に可能性を感じている。学年ごとに学習内容が異なるため教師から直接指導を受ける時間は減る半面、主体的に学ぶ姿勢を育む効果があるからだ。東日本大震災の被災地や地域で小学校の統合が加速する中、人材育成の上で主体性はこれまで以上に大切となる。複式学級の長所を最大限に発揮できる体制を築いてほしい。
 過疎化と東京電力福島第1原発事故の影響で児童が減った宮城県丸森町の耕野小。児童14人だった2016年度は3、4年生が在籍せず、1、2年生の4人、5、6年生の10人の計2学級で授業が進められた。目を見張ったのが自主学習を徹底して指導する姿だった。
 国語の時間で感情を表す言葉に線を引き、計算問題は数字に赤い丸を付ける。自主学習で全校共通としているルールだ。話し合い学習でも1年生の時から「私は○○に線を引きました。○○さんはどうですか?」といったやりとりを繰り返す。
 取材で児童に接し、コミュニケーション力の高さに驚いた。「自分はあの年齢の時、ちゃんと受け答えができていたか」と自問した。
 二瓶美紀子教諭(43)は「1人で考えるスキルを身に付けるには積み重ねが大事」と強調した。直接指導の時間が少なく、少人数の場合に教師に甘えて受け身になりがちな複式のデメリットを補おうとする授業の工夫に納得した。
 文部科学省は20年度に全面実施する新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」を掲げた。だが、深い学びのイメージは学校現場でもつかめていない。詰め込み型教育が行き詰まり、経済協力開発機構(OECD)が発表する国際学習到達度調査(PISA)などで学習意欲の低さが指摘される中、国の提唱は抽象論にしか聞こえない。
 複式は深い学びの本質を先取りした部分があると思った。今後、一般校で授業の改善が模索される際、複式の取り組みにヒントが見つかるかもしれない。各県教委は複式の教員向けに研修会を開いているが、参加対象を一般校にも広げてはどうか。
 被災3県では小学校の統合が進む。震災前の10年度と17年度で、岩手は389校から66校減り、宮城は437校から58校減、福島は497校から53校減となる。地域事情はそれぞれだが、小規模校を存続させる上では複式の効果を生かす環境整備が重要だ。
 津波被害を受けた牡鹿半島にある石巻市寄磯小(児童11人)は16年度、複式の授業に情報通信技術(ICT)を本格的に取り入れた。算数の授業で1年生がタブレットを使って時計の見方を学ぶ傍ら、2年生がプロジェクターで分数問題の解き方を発表する授業を取材した。
 担任だった及川彩教諭(26)は「児童が興味を持って授業に集中するのにICTは有効」と話す。明確な教育方針の下で技術を活用することには共感できる。
 地域の明日を担う児童の主体的な学びが求められる中、児童が被災者と接することで知性と感性の両面で豊かに成長する可能性も秘める。教育効果を高める手段の一つとして、複式に一層光が当たってほしい。(角田支局・会田正宣)

[複式学級]1年生と2年生の場合は計8人以下、2年生以上は計16人以下の場合に複式学級が編成される。被災3県で2016年度に複式学級があった公立小は岩手95校、宮城40校、福島113校。


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2017年04月03日月曜日


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