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<読者と考える紙面委員会>「実名・匿名報道」社会的影響考え報道を

実名・匿名報道などに関し意見を交わした紙面委員会
須藤力(すどう・つとむ)委員 弁護士。1956年青森市生まれ。中央大法学部卒。83年弁護士登録。99年度仙台弁護士会副会長、2000〜03年東北弁護士会連合会代表幹事、04年に法務省の法制審議会幹事。09年12月から宮城県収用委員会委員、11年7月から同委員会会長代理。
榊原進(さかきばら・すすむ)委員 NPO法人都市デザインワークス(仙台市)代表理事。1974年静岡県生まれ。東北大大学院工学研究科博士課程前期修了。2002年から現職。市民主体のまちづくりを実践。14年から一般社団法人荒井タウンマネジメント(仙台市)理事を兼務。
成田由加里(なりた・ゆかり)委員 東北大会計大学院教授。1964年東京都生まれ。慶大商学部卒。2010年から現職。仙台市で公認会計士事務所と税理士法人を経営。宮城県監査委員、金融庁公認会計士試験委員、NPOの会計税務を支援するNPO法人の理事も務める。

<少年事件での名前>
◎死刑確定後悩ましい 須藤委員
◎被害者実名に違和感 榊原委員
◎プライバシー重視で 成田委員

 河北新報社は6日、第43回「読者と考える紙面委員会」を仙台市青葉区の本社で開いた。実名・匿名報道と長期連載「止まった刻(とき) 検証・大川小事故」をテーマに、仙台弁護士会の須藤力弁護士、NPO法人都市デザインワークス(仙台市)の榊原進代表理事、公認会計士の成田由加里東北大会計大学院教授の3委員が議論した。
(司会は河北新報社編集局長・今野俊宏)

 −石巻市で2010年に起きた少年による3人殺傷事件で、元少年の死刑判決が確定する時点から、河北新報社など報道各社が実名報道に切り替えました。
 須藤 少年の容疑者の実名を報道しないのが少年法の基本ルールだが、死刑判決が確定した場合にどうするかは悩ましい。匿名が原則という気がするが、新聞社のルールに基づいた結論を全面否定するのは、なかなか難しい。
 榊原 ルールが明確ならば、切り替えは構わない。河北新報社の方針を常にオープンにすることが必要ではないか。インターネットで情報があふれる中、ずっと同じでいいのかどうかは議論があっていい。
 成田 実名報道は社会的制裁につながる。家族や親戚、さまざまな関係者がいる中で、20歳という基準で大なたを振るったような印象を覚えた。プライバシーが重視される社会の流れがあり、十分な議論が必要ではないか。

 −殺害された女性2人のうち1人は高校生で、当初から実名で報じました。なぜ加害者が匿名で、犠牲者は実名なのかという声もありました。
 榊原 大きな違和感がある。縁のある地域の事件でなければ被害者の実名・匿名は気にならない。加害者よりも被害者のプライバシーが暴かれている印象だ。実名や家族のプライベートな情報まで掲載する必要があるのか。2次被害にならないのかと思う。
 成田 被害者の実名が分からなくても、事件の内容は読者として把握できた。遺族の意思で実名を出すならいいが、匿名報道を原則とすべきではないか。報道の必要性と書かれた側の不利益とのバランスを考えなければならない。
 須藤 非常に難しい。被害者の意思は無視できないが、被害者の意向で実名か匿名かを決める話でもない。事件の大きさや社会への影響力などを考えて判断するのが一つの、結論になっていない結論なのだろう。

 −ジャーナリズムの基本は事実を伝えることです。「いつ、どこで」など5W1Hの事実の根幹をきちんと伝えることが、国民の「知る権利」に応えることにつながると考えています。実名報道は真実性の担保になります。
 榊原 取材で知った実名を手掛かりに、取材を重ねて裏を取ることは必要だ。ただ、情報をどこまで載せるか。新聞では実名でもネット上は匿名にするとか、そのすみ分けがあってもいいのかなと思う。
 成田 個人情報をどこまで守るかの基準が不明確な現状がある。その基準をしっかりと議論して公表するのも新聞社のあるべき姿ではないか。例えば、匿名ベースだが当事者が公人であれば実名を出す。私人については十分に考慮するなど。
 須藤 実名・匿名報道は、憲法上保障された報道の自由とプライバシー権の衝突で、どうバランスを取るかだ。犯罪者だから実名にしていいのか。世間を騒がすような重大事件は実名報道もありだが、(少額の)窃盗事件などは実名にしなくてもいいのではないか。そもそも記事にする必要があるのか。

 −仙台市出身の元名大生による殺人・タリウム混入事件で、容疑者は未成年だったが、ネット上で実名や顔写真が流出しました。時代の変化を踏まえた実名報道の在り方をどう考えますか。
 成田 個人が発信する場合、ジャーナリズムの精神や正義がない場合があり、情報を受け取る側も好奇心に駆られている。どんな結果を生むかをしっかり考えていない。市民教育が必要で、新聞社はそうした力にもなってほしい。
 榊原 時間を経ても個人情報がネットに残るので被害が大きい。少年法の理念を侵す動きがネット上にあるのなら、業界として取り消すなどの対策を考えることも検討してほしい。
 須藤 モラルのない私的なリンチをやっているように見える。新聞社は行き過ぎた情報流出はおかしいとの前提に立った上で実名報道をしてほしい。


関連ページ: 宮城 社会

2018年02月16日金曜日


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