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<週刊せんだい>福祉現場 真冬に訪ねて(4)3氏インタビュー

川島孝一郎<かわしま・こういちろう>54年酒田市生まれ。東北大大学院医学研究科修了。同大病院神経内科勤務を経て96年に仙台往診クリニックを仙台市泉区に開業。06年、青葉区に移転する。東北大医学部臨床教授。63歳
和川はつみ<わがわ・はつみ>53年奥州市生まれ。歯科技工士。90年にALSと診断された次男さんらと95年に宮城県ALS患者家族会設立。翌年、日本ALS協会県支部(青葉区)となる。支部の機関誌発行に携わる。65歳
乾祐子<いぬい・ゆうこ>52年仙台市生まれ。約6年間の義父の自宅介護を経て、05年にNPO法人あいの実(泉区)を設立。16年から一般社団法人全国重症児デイサービス・ネットワーク(名古屋市)副理事。65歳

 2月の週刊せんだいは「福祉現場 真冬に訪ねて」をテーマに、寒さの厳しい時季、障害のある人やお年寄りの日常生活を守るため、サービスに取り組む福祉施設の専門職員たちを紹介してきました。最終回は、在宅医療をサポートする医師、難病の患者家族、事業者の3者に、冬場ならではの苦労話や、これからの福祉社会への思いを聞きました。


◎在宅医療 仙台は先進地/仙台往診クリニック院長 川島孝一郎さん

 在宅療養支援診療所として、仙台市と利府町、亘理町に診療所を構えています。常勤医、非常勤医、看護師、薬剤師ら計約40人の体制で、大和町から山元町までの仙台圏14市町が訪問エリアです。
 がんや脳卒中、神経難病、認知症、老衰など、さまざまな症状で療養する10代から100歳代の約550人を、全体で月に1500回ほど訪問診療しています。約7割は、65歳以上の高齢者となっています。
 自宅療養者の中では通院する方が多いと思いますが、在宅医療は、冬に厚着をして病院の待合室で長い時間待つ必要がありません。高齢者にとってメリットがあるのではないでしょうか。
 冬場は、体調を悪くする人が出て緊急の対応が増えます。特に雪が降っている時は大変です。当院でも過去に、大雪の日、女性医師が大和町の山奥のお宅を診察した際、車が脱輪。何百メートルも雪かきをしてたどり着いた民家で電話を借り、助けを呼んだことがありました。
 例えば、在宅医療の従事者、訪問介護員といった特定の職業がへき地で使用する車には、救急車や消防車と同じようにスパイクタイヤの使用を条件付きで認めるなど、こまやかな配慮があってもいいのではないでしょうか。
 少子高齢化が進んでいますが、仙台市は、病院で亡くなる人の割合が政令指定都市の中で最も少ないのです。言い換えれば、仙台の医師の皆さんは、在宅医療への意識が全国トップクラスで高いということになります。最期まで自宅で暮らしたいという方の思いに応えられる環境づくりが、少しずつですが広がっています。


◎介護員の手にぬくもり/日本ALS協会宮城県支部役員 和川はつみさん

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した夫(次男さん、2011年11月に61歳で死去)は、呼吸器を着けて自宅で20年以上療養生活を送りました。ALSは運動神経が侵されることで全身の筋肉が衰えていく難病です。筋力が無いため冬場は体温を保持するのがとても大変でした。
 1〜3月は体温が33度台。夜中に32度台まで下がり、顔が蒼白(そうはく)になったこともありました。ストーブとエアコンが24時間欠かせず、暖房費が月4万〜5万円になったことも。湯たんぽやカイロも使ってみましたが、夫は自らは体を動かせなかったため部分的に低温やけどをしてしまい、いろいろ失敗もありました。
 体温が低いと意識がぼんやりしてしまうようで、何度か冬を越すうちに、夫から「僕は冬になると冬眠します」なんて冗談も出ていましたね。
 日本ALS協会宮城県支部は毎年4月、榴岡公園(仙台市宮城野区)などで花見を行っています。患者や家族、担当のヘルパー(訪問介護員)さんたちが50人ほど集まって、「この冬もよく頑張ったね」と再会を喜び合うのです。
 夫は毎日朝から夕方まで訪問介護サービスを利用していました。寒い外からうちに来たばかりのヘルパーさんの冷えた手が体に触れた時も、その手から人のぬくもりを感じ、夫は「ヘルパーさんの手は温かい。魔法の手だ」といつも思っていました。
 介護保険制度が整ったことで、利用者と家族の権利が強くなりました。一方、福祉業界は担い手が少なくなっています。ヘルパーは介護のプロ。利用者も介護を受けるプロとして、互いにもっと立場を尊重し合えるよう努力することが大切だと考えています。


◎夜間の雪と寒さ案じる/NPO法人あいの実理事長 乾祐子さん

 神経難病により身体に重い障害のある方や、脳性まひなどで医療的ケアが必要な子どもたちを対象に、訪問介護事業や通所施設の運営を行っています。仙台市内を中心に、1歳から90歳代の約110人の方が利用登録しています。
 寒くなると、訪問介護の利用者が体調を悪くして亡くなったり、入院したりすることが増えます。その場合、非常勤の訪問介護員は、急に仕事がなくなるため収入が不安定になってしまいます。通所施設も、特別支援学校でインフルエンザが流行すると、いつも放課後に通ってくる子どもたちのキャンセルが増えてしまいます。
 東北や北海道など寒冷地にある福祉事業所全体で、今後、国に窮状を伝える機会を持てればいいと思っています。
 雪の降る日は、夕方になると夜間に働く訪問介護員たちのことが特に気掛かりです。路面が凍結してどんなに交通事情が悪くても、介護員同士の交代時間に遅れるわけにはいきません。
 また、介護員がたくさん着込んでいても、午前3時ごろの冷え込みはとてもつらいものです。利用者は布団に包まれて寝ているので、暖房の温度を高くするわけにはいきません。あいの実職員は、利用者の承諾を得て、半畳サイズの電気カーペットを使わせていただいています。
 冬は、クリスマスやお正月など行事ごとが多い季節。幼稚園で開かれるイベントに、うちの施設に通う子たちが参加させてもらえたら、という思いがあります。東京では、幼稚園と福祉施設の幼い子どもたち同士の交流が盛んに行われているんです。仙台でも、そんな機会が増えていったらいいなと願っています。


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2018年02月22日木曜日


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