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最悪シナリオ「津波浸水域」被災3県未公表 進むまちづくりに懸念

復旧整備が進む沿岸被災地の防潮堤=岩手県陸前高田市

 東日本大震災を受けて施行された「津波防災地域づくり法」に東北沿岸の被災自治体が困惑している。各都道府県に「最大クラスの津波で防潮堤が決壊」など最悪シナリオを前提とした津波浸水域の公表を促しており、復興まちづくりとの整合性が問われかねないからだ。岩手、宮城、福島の被災3県は公表に至っていない。
 岩手県の陸前高田市で2月上旬、八戸から気仙沼まで7市の首長でつくる三陸沿岸都市会議があった。開催市の戸羽太市長は席上、最悪想定の津波浸水域に強い懸念を表明した。
 「今進めている復興まちづくりそのものが否定されかねない」
 陸前高田市は、震災の津波を最大クラスとした浸水シミュレーションで中心市街地の大規模かさ上げを進めてきた。防潮堤は「決壊」を前提にしていない。
 事情は他市も同様だ。「二重スタンダードになる」(気仙沼)「今公表されると大混乱をもたらす」(大船渡)「こちらから公表を強く要望すべきなのか。痛しかゆしだ」(釜石)と相次いで不安を口にした。
 法の施行は2011年12月。防潮堤の復旧高や新たな浸水シミュレーションが各県から沿岸自治体に伝達され、復興計画の策定が始まっていた時期だった。
 「まるで後出しじゃんけん」とこぼすある自治体の防災担当者は「国が巨費を投じて最新の防潮堤を造っているのに、これでは自己否定ではないか。法律とまちづくりで考え方が違うことを住民に丁寧に説明しないと、大変なことになる」と危惧する。
 東北では青森、秋田、山形の3県が既に法律に基づく津波浸水域を公表した。岩手県は、国の中央防災会議で日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震による被害規模が提示されてから作業に着手する予定で、公表時期は未定という。
 県河川課は「法律は、どう避難するかに力点を置いたと理解している。一方、現場で復旧が進む防潮堤はできる限り壊れにくい設計になっている」と説明。その上で「震災を踏まえハード整備が進む被災3県には特殊事情があることを理解してほしい」と訴える。
 震災では「想定外」の津波で多くの人が犠牲になった。同法を所管する国交省は「よりリスクの高い情報をキャッチしたら、住民へ開示すべきだ。知っているのに示さないのでは、行政の責任が問われる」(保全課)と主張する。

[津波防災地域づくり法]東日本大震災を教訓に制定。知事は建物の建築を制限するなどの「特別警戒区域」「警戒区域」を指定できる。都道府県に津波浸水域の公表、市町村に地域づくり推進計画の策定をそれぞれ求めている。


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2018年02月22日木曜日


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