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<仙台いやすこ歩き>(75)干菓子/ほわっと溶ける上品さ

 おっ、梅にウグイスと思ったらメジロだった。郵便受けに届いた友人からのはがきに一言「お会いしたいものですね」。途端に彼女がいつもしつらえてくれた部屋でいただく一服のお茶が心に浮かぶ。添えられるのは決まってあのお店の干菓子。

 そんな話を画伯にすると「あの店は私の散歩コースで、いつも誘惑に負けちゃうの」。
 ならばと、その散歩コースを歩いて仙台市青葉区大手町へ。広瀬川と青葉山を背後に控え、どこか趣ある街並みに藍ののれんが揺れる、あの店とは「森(もり)の香(か)本舗」だ。迎えてくれたのはご主人の道川正貴さん(68)。そしてガラスケースには干菓子、生菓子が並ぶ。そのかれんなこと、美しいこと、楽しいこと。のれんもご主人も菓子たちもりんとして、それでいて朗らかな空気が流れている。

 「森の香本舗は父が始めたベーカリーで、パンにケーキ、季節ごとに桜餅やくず餅を作って出す、街のお菓子屋さんだったんですよ」と道川さん。それをすんなり継いだのではなかった。高校を卒業すると東京のデザイン専門学校へ進み、好きなデザインの道へ。デザインコンテストで一席を受賞するなど、若くして頭角を現し始めたところに、体力に限界を感じていたお父さんから、店を継いでほしいと告げられる。
 悩んだ末、父の歴史を引き継ぐことに決めたという。「小さい時からおやじを見て育ってきました。夜中の3時から工場で黙々と働く姿を」。それは同時に、ゼロから形をつくり上げ、出来上がった品を直接お客さまに渡す、幸せな姿でもあった。

 跡を継ぐから和菓子を学びに京都へ行きたいと言って、京都の老舗にでっち奉公に入る。23歳の時だ。住み込みとは、主人が興奮する癖、喜ぶ癖、居住まいまで全て吸収しながら修業することだったと話す。
 「和菓子の前にデザインをやっていてよかったのは、徒弟制度の中では伝わらない、『発見する』という手段を知っていたことでしょうね」。技術的にできないことで迂回(うかい)する、その工程で見つかる発見があるという。「和菓子は季節を表すことを旨としていますが、固定された美以外を発見するのも楽しいんです」とにっこり笑う。

 仙台に戻り、のれんを継いで40年以上。店のガラスケースに目をやれば、氷が割れて梅のつぼみが膨らむ様子を表した干菓子。「あっ、今の季節だ」と、いやすこ2人つぶやいてしまう。おひなさまやチョウチョも並ぶ。「御三どん(台所仕事)ほど重要ではないけれど、楽しんでいただきたいですね」と話す道川さんは、丸メガネ、本などオリジナルの焼き印や木型をいろいろと見せてくれた。

 そっと供された落雁(らくがん)。しっとりとして口に入れるとほわっと溶け、和三盆の上品な甘さ、香ばしさとともに喜びが広がった。こんな落雁、初めてだ。
 白い上着に手を重ねてずっと話をしてくださった、居住まいの美しいご主人に見送られ、横尾忠則さんが「僕が店の名前を書いてあげるよ」と言ってくれたという、ススキの絵ののれんをくぐって店を出る。手には美しい干菓子の包み、大手町の街並みは淡い春の夕暮れだ。

◎薄茶を引き立てる名脇役

 和菓子は作り方から生菓子、干菓子、半生菓子に大別される。
 生菓子は一般的に水分を割合多く含んだ菓子で、茶の湯で上菓子と呼ばれる。練り物やようかん、団子、まんじゅう、カステラなどがあり、日持ちの短いお菓子。生菓子に対して水分の少ない乾いた和菓子のことを干菓子といい、落雁や煎餅、かりんとう、甘納豆、コンペイトーなどがある。半生菓子は二つの中間的な存在で、もなかや州浜などがある。
 干菓子は、薄茶用の菓子として発展した。甘味と口当たり、口ほどけが重要な要素で、薄茶を引き立てる名脇役である。保存が利くため、不意の来客のもてなしに、お彼岸などのお供えに重宝されてきた。
 干菓子の口ほどけを左右するのが材料となる和三盆糖。四国産の竹糖(ちくとう)を原料に、手で研いで(練って)作る砂糖で、名前は盆の上で3度研ぐという意味からきている。落雁などに使われ、砂糖の中でも高価なものである。



 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2018年02月26日月曜日


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