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<回顧3.11焦点>住宅借り上げ制度、周知不足 生活再建急ぎ…多額の出費も

2部屋に5人が暮らす堀内さん方。荷物などで部屋一つが埋まっている=宮城県登米市

 東日本大震災の被災者支援で導入された「民間賃貸住宅借り上げ制度」は、被災者が制度の支援を十分に活用できなかったり、前提となる不動産業者の承諾を得にくかったりする問題が表面化している。スムーズに制度を利用できなかった被災者は、不公平感を抱きながら、生活再建の第一歩を踏み出さざるを得なくなっている。

 「家も仕事も失い、困っているのは皆同じ。家を借りた時期で支援に差が出るのはおかしい」
 宮城県南三陸町から避難した堀内裕美さん(45)は不公平感を訴える。
 震災前は町役場近くで飲食店を経営。店舗兼住宅を津波で流され、登米市内の借家に一家5人が暮らす。
 20年近く空き家だったため、貯金をはたいて改装し、家電をそろえた。
 テレビアンテナやガスメーターなどの工事や補修に約20万円。冷蔵庫や電子レンジなど最低限必要な家電とガスコンロ、カーテンなどは約20万円で買いそろえた。
 仮設住宅は申し込まなかった。「本当は地元を離れたくなかった。でも、どこにいつ建つのかも分からず、待っていられない」。震災当時中学2年の長女は4月から受験生、長男は小学校入学を控えていた。3月下旬に登米市に引っ越した。
 県の借り上げ制度を知人から教えられ、手続きをしようと、登米市の総合支所を訪ねたのは5月上旬。洗濯機、冷蔵庫など生活家電6点が支給される日本赤十字社の寄贈事業や、さまざまな支援策も説明された。
 「初めて聞いた話ばかりだった」。すでに引っ越して1カ月以上。必要な物はあらかた自力でそろえてしまった。しかも借り上げ扱いになるのは5月1日以降で、それ以前の家賃は自己負担になるという。
 せめて費用補助はないものかと懇願したが、「そんな制度はない」と、つれない返事。収入が激減する中、堀内さんは避けることができた多額の出費を悔やんだ。
 仙台市青葉区の自営業男性(48)は、住んでいたマンションが大規模半壊で立ち入り禁止となり、県外に一時避難した。
 仙台に通い、転居先を探していた4月下旬、借り上げ制度を新聞で知り、意中の物件が対象となるか確かめようと市役所を訪ねた。
 妻と2人暮らしで3LDK、家賃約7万円。「間取りは県の示した目安を超えているが、家賃は範囲内なので、申請してみては」と市職員。物件を管理する不動産業者と家主に自分で承諾を得てほしい、と説明された。
 対応した業者は「国などから詳しい説明がないまま制度が始まった。困っている」と苦渋の表情を浮かべた。所有者は県外在住とも伝えられ、「手続きに時間がかかる」と難色を示された。借り上げ制度にこだわっていると、入居を断られかねないと判断し、全て自己負担で借りることにした。
 男性は「やっと見つけた物件だったし、早く生活を立て直したかった。でも、借り上げ制度がこれほど使いにくいとは思いもしなかった」と話している。=2011年6月18日河北新報
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 東日本大震災の直後から、被災地で暮らす市民の課題を取り上げた河北新報連載「焦点」。震災7年の節目に、発生翌年までの主な記事をまとめました。
=肩書や年齢は掲載当時のものです。=


2018年03月02日金曜日


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