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<回顧3.11焦点>お盆迎える被災寺院、公的支援なし 檀家の半数以上が犠牲に…

津波で壊滅的な被害を受けた墓地を訪れ、お盆を前に先祖の墓を探す帰省者ら=2011年8月8日、宮城県石巻市門脇町の西光寺

 東日本大震災では、東北の沿岸部を中心に多くの寺院で本堂が流失・損壊したり、墓石が倒壊したりするなどの被害が相次いだ。震災発生から5カ月。お盆を目前に、被災した寺院は復旧に懸命だが、公的な支援はなく、やはり被災した檀家(だんか)にも多くを望めない。寺院自体や宗派の努力によるしかないのが現状だ。(成田浩二、若林雅人)

<本堂流失多数>
 全国の主要59宗派や都道府県仏教会などが加盟する財団法人全日本仏教会(全日仏、東京)によると、東日本大震災で被災した寺院は2011年8月4日現在、計2718寺で、このうち東北地方が1078寺。東北地方全体(5765寺)の約18%を占める。
 津波による流失などの被害を受けた寺院は宮城37、岩手8、福島2。このほか、本堂など建物の全壊が宮城13、福島12、岩手5、半壊が宮城25、福島20、岩手6となっている。
 本堂の再建やがれきの撤去、倒壊した灯籠や石碑の修復などに対し、憲法の政教分離規定で、国や自治体が助成金や補助金を支出することはできない。寺院が自己負担するか、寺院が所属する宗派の支援、檀家ら個人や企業からの寄付に頼らざるを得ない。

<半数以上犠牲>
 だが、被災した寺院では檀家の多くも被災。寺院によっては檀家の半数以上が犠牲となったり、仮設住宅への入居などでほかの地域に移転したりしたケースもあり、檀家の支援を望める状況にはほど遠い。
 財務省は震災後、被害復旧を目的に宗教法人など公益法人に寄付する場合、個人の寄付は所得控除額の上限を通常の2倍に引き上げたほか、企業の寄付は全額を損金(経費)算入できるようにした。従来より幅広い層から寄付を集めやすくするのが狙いだ。
 各宗派も、青年僧侶を中心にがれきの撤去や墓の修復などのボランティア活動を続けているほか、津波で本堂や庫裏が流失するなどして避難生活が続く寺院に、見舞金や生活費としての一時金を支給するなど、財政面でも支援している。

<結び付き切れ>
 ただ、将来的に寺院が存続できるかどうかについては懸念材料もある。
 浄土宗宗務庁は、宮城県が被災地で実施している建築制限を挙げ、「寺院を元の場所に再建できるかどうか分からない。仮に移転先に建て直すとしても、財政的に可能かどうかの問題がある」と話す。
 曹洞宗宗務庁は「避難生活などで、寺院と檀家の結び付きが途切れた」と指摘。被災した檀家に簡易仏壇を贈呈したり、寺院に仮本堂用のプレハブを寄贈したりするなど、両者の関係を取り持とうと躍起だ。
 寺院には地域のコミュニティーセンター的機能もある。関係者は「被災者の心の支えとなり、気持ちの整理を付けてもらうためにも必要な存在だ」(全日仏)との認識で一致しているが、お盆までに復旧が間に合わない寺院は少なくない。
 鈴木岩弓東北大大学院文学研究科教授(宗教民俗学)は「供養は本来、お盆という時間、寺院という空間の制限があるものではない。僧侶らが人々の気持ちを安らげる救いの場をどう設けるかが、問われている」と指摘する。

◎墓地壊滅「納骨できない」

 石巻市門脇町の浄土宗西光寺。本堂や2階座敷には約90の骨箱が保管されている。
 「避難所や仮設住宅に住むご遺族が預けていきました。納める墓がないのです」。副住職の樋口伸生さん(48)が話す。
 津波は家々をなぎ倒しながら、海岸線から約1キロの境内に押し寄せた。約1000基あった墓石は一部を残して壊滅状態となり、大量の土砂とがれきに埋まった。埋葬されていた遺骨も周辺に散乱した。
 ボランティアらの力で、がれきの山はようやく撤去され、散らばった遺骨も拾い集められた。しかし、墓石の修復はほとんど手付かずの状態となっている。
 震災で石巻市内の親戚6人を失った宮城県大和町のパート鈴木恵さん(39)は、西光寺にあった墓石が今も見つからない。「先祖の供養すら満足にできない。変わり果てた光景に涙が出ました」と声を振り絞る。
 東京都の会社員男性(29)は、寺のそばの実家で母と祖母を津波で失った。父は15年ほど前に他界し、家族は姉だけになった。お盆前に供養を終え、「自分の気持ちは落ち着いてきた。ただ、納骨できないのはつらい」と唇をかむ。
 東京には位牌(いはい)だけを持ち帰り、遺骨は埋葬しないまま西光寺の本堂に置いていく。「後ろ髪を引かれる思いだ」と言葉少なに話す。
 寺を守る樋口さんは可能な限り遺族に寄り添い、遠方の火葬場にも何度も足を運んでお経を上げてきた。嘆き苦しむ心に、少しでも希望と安らぎを―。樋口さんの切なる願いだ。=2011年8月11日河北新報
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 東日本大震災の直後から、被災地で暮らす市民の課題を取り上げた河北新報連載「焦点」。震災7年の節目に、発生翌年までの主な記事をまとめました。
=肩書や年齢は掲載当時のものです。=


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2018年03月05日月曜日


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