岩手のニュース

<大槌町旧庁舎解体>判断は後世に重い責任 議論尽くしたか疑問も

 東日本大震災で被災した岩手県大槌町旧役場庁舎の存廃問題が15日、一応の決着を見た。解体方針を掲げる平野公三氏が町長に就任してから2年半。一連の経緯を振り返ると、議論は尽くされたのかという疑問がなお残る。

 保存か解体かを判断する上での前提情報が、正確に共有されていたとは言い難い。町民150人を対象とした河北新報社の意向調査では、「解体すべきだ」と回答した102人のうち42人が「維持管理費」を理由に挙げた。
 実際の年間維持費は最大でも120万円と見込まれ、初期整備費用も国の復興交付金を活用できる。財政圧迫への懸念が町内で独り歩きし、町民に予断を与えた面は否めない。
 町内だけでの議論にも限界があった。震災の悲劇を伝える建物が被災地から次々姿を消す中、中心市街地に位置する旧庁舎は町内外の大勢の人が犠牲者を追悼できる数少ない場所だ。
 最終的に町民が決める問題であったとしても、震災遺構としての価値を冷静に見極めるべきだった。南三陸町の防災対策庁舎を県有化した宮城県のような姿勢が岩手県になかったことが惜しまれる。
 平野町長は「さまざまな意見に耳を傾ける」と語る一方で「解体の方向性は微動だにしない」と断言。町民説明会でも持論を述べるのに終始し、幅広く合意を得る努力に欠けていた。
 平野町長は「震災を忘れない、伝える、備える」と強調するが、震災遺構なしで津波の脅威を伝承することは本当に可能なのだろうか。今回の判断が後世への重い責任を伴っていることを、町長と町議会は忘れないでほしい。(解説=釜石支局・東野滋)


2018年03月16日金曜日


先頭に戻る