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<点検・再始動 復興の理想と現実>生活基盤(4完)陸前高田市・公共交通 新体系の発信不可避

中心市街地を往来する乗り合いタクシー。市民への浸透が課題だ=陸前高田市

 陸前高田市は新年度、地域公共交通の運行を大幅に見直す。東日本大震災からの復興の進展に伴って様変わりしつつある都市構造に対応しなければならない。

<国補助金頼み>
 高台の各地の造成地で住宅群が再建される一方、商業施設はかさ上げした中心市街地に進出。岩手県立高田病院や体育施設は高台エリアに点在する。
 JR大船渡線のバス高速輸送システム(BRT)の陸前高田駅が移転する中心市街地の広場に、バス路線などを誘導する計画だ。高田病院や高台の住宅地を結んで循環する路線を新設する。戸羽太市長は「市民や来訪者が利用しやすい環境を構築したい」と話す。
 市は震災後、国の被災地特例を活用しタクシー会社などに委託して乗り合いタクシーの運行を始めたほか、登録予約制のデマンドタクシーを導入。縮小せざるを得なかったバス路線を補完してきた。
 しかし運行実績は伸び悩み、全6路線とデマンド方式は17年度(4〜11月)の収入がそれぞれ経費の20%以下にとどまった。
 市企画政策課は「利用者が少ない上、一律の低額運賃が響いている」と分析する。国の補助金がなければ成り立たないのが実情だ。

<認知度は3割>
 藤原喜代子さん(75)は昨年5月、災害公営住宅長部団地に入居した。1人暮らしで、運転免許は既に返納。団地周辺には商店もないため、週1回、市内に住む長男が送り迎えをして約4.5キロ離れた中心市街地で買い物をする。
 乗り合いタクシー「福伏線」が1日1往復運行しているが、藤原さんは「使い方がよく分からない」と言い、利用したことがない。
 市の調査でも乗り合いタクシーとデマンド方式の認知度は3割にとどまり、様変わりした公共交通体系が市民に浸透していない現状を浮き彫りにした。
 市企画政策課は「便数を増やすのは運転手確保や経費の面から難しい。車体を分かりやすくするなど知名度向上策を考えなければならない」と話す。
 被災地特例の補助金は仮設住宅団地数に応じて配分されるため、集約が進めば減少する。復興期間終了後の2021年度以降は特例扱いもなくなる見通しだ。
 地域の高齢化が進めばおのずと公共交通機関への依存度は高まるという分析もあるが、交通サービスの必要性が高まるまで我慢の経営を続けられるかどうかは不透明だ。
 市地域公共交通会議の委員で東大大学院の羽藤英二教授(交通計画)は「市民の意識を早めに公共交通に向けさせるためにも、利用するとこういう暮らしができるという発信が今の段階から必要だ」と指摘する。
(大船渡支局・坂井直人)


2018年03月17日土曜日


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