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地元で産めぬ不安拡大 かづの厚生病院の分娩機能、今秋休止 医師確保へ官民連携図る

鹿角市中心部にある「かづの厚生病院」。今秋にも分娩機能が大館市立総合病院に集約される

 秋田県鹿角市で唯一分娩(ぶんべん)が可能な「かづの厚生病院」は昨年2月、産婦人科医を派遣している秋田大など3大学の意向で「里帰り出産」の新規受け入れを中止した。さらに大学側は常勤医の派遣を継続できないと通告したため、今秋には分娩機能自体が隣接する大館市の市立総合病院に集約される。大館までは夏場でも車で40分以上かかり、地域に「出産を諦める人が増えるのではないか」と懸念が広がる。(秋田総局・渡辺晋輔)

<「土台なくなる」>
 「妊婦が置き去りにされている」。鹿角市文化の杜交流館コモッセで今月上旬開かれた「お産ができる鹿角を望む住民集会」で、分娩施設が地域からなくなることに約120人の出席者から不安の声が相次いだ。
 人口約3万1500の市は移住・定住や子育て支援に力を入れる。厚生病院で3人を出産した主婦大森雅子さん(34)は「市内には子育てサークルが多く、3人目、4人目を産む人が多い」と話す。
 分娩機能集約化には「産める環境があるから人が住む。地域が縮小する不安と住み続けられるのかという不安がある」と漏らした。
 主催団体の一つで、昨年2月に設立された「鹿角の産婦人科を守る会」の代表を務める会社員安保大介さん(36)は「出産できる施設はいわば地域の土台。子育て環境が充実していても土台がなくては話にならない」と危機感を募らせる。

<出生数減も一因>
 厚生病院には秋田大と岩手医科大が、大館市立総合病院には弘前大がそれぞれ常勤の産婦人科医を派遣している。集約の背景には大館・鹿角地域の出生数減少や深刻な医師不足がある。
 県や鹿角市、隣接する小坂町などは分娩機能の維持を繰り返し要望した。しかし大学側は「安全な出産体制を整備するには、分娩を取り扱う施設を集約してスタッフを充実させるしかない」と回答。方向性は覆らなかった。
 県によると、産婦人科医と年間分娩件数は大館市立総合病院が4人、約500で、厚生病院は2人、約200。集約後は大館市立総合病院に常勤医6人、分娩件数は約700となる見込みだ。
 県は集約後を見据え、大館市立総合病院の機能強化に向け分娩室増設などの整備費約7300万円全額を市に補助する。集約は施設整備が終わる今年秋ごろになる。

<地域が意思表示>
 一方、鹿角市は新年度から医師確保対策を専門に担う地域医療推進員1人を配置する。児玉一市長は13日の市議会3月定例会一般質問で「分娩機能は必要不可欠な都市インフラ。自分たちで医師を見つけるしかない」と答弁し、県や厚生病院、市民団体と連携して取り組む考えを示した。
 先例になるのが、住民団体「鹿角の医療と福祉を考える市民町民の会」の取り組みだ。
 会は常勤の精神科医が不在になる事態を受け2006年に設立された。精神科医を募るチラシを全国の道の駅に置き、今春に大阪の医師が厚生病院に勤務するきっかけをつくった。会長の西文雄さん(68)は「地域が意思表示をしなかったら医師はいなくなっていた」と振り返る。
 産婦人科を守る会代表の安保さんは「住民の医療に対する意識を『受ける』から『支える』に変えていきたい。諦めずに市の手助けをしたい」と話す。

[かづの厚生病院]17診療科、稼働病床207床。2017年4〜12月の入院患者3万6182人、外来患者10万5850人。このうち産婦人科は入院1858人、外来5018人。16年度の分娩件数220。分娩機能の集約後も、妊婦健診や産婦人科の外来診療は継続する。


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2018年03月22日木曜日


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