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<裁かれる闇 旧優生保護法国賠訴訟>(下)忘却の清算 「救済」置き去りに

超党派議連の設立総会には厚生労働相経験者らも出席。提訴を機に救済への動きが加速している=6日、衆院第1議員会館

◎提訴で大きなうねり

 旧優生保護法による強制不妊・避妊手術を巡る問題の解決を図るチャンスは、これまであった。

<不当な拘束念頭>
 ハンセン病国家賠償訴訟の判決で熊本地裁は2001年、療養所への隔離政策の違憲性を認め、国が敗訴した。当時の小泉純一郎首相が控訴断念を政治決断して謝罪し、療養所への入所期間に応じて補償金を支払う救済法が同年成立した。
 判決は、ハンセン病患者への強制手術についても「非人道的取り扱い」と指弾した。だが、政府と国会は、同病以外の遺伝性疾患などを理由に手術を強制された被害者の救済は看過した。
 「ハンセン病補償は隔離による不当な拘束が念頭に置かれ、社会的な迫害の実態考慮が不十分だった。弱い立場の人を構造的に排除する差別意識こそが検証されるべきだった」。同病問題に詳しい東北学院大経済学部の黒坂愛衣准教授(社会学)はこう指摘する。
 全国13カ所の同病療養施設の一つ、松丘保養園(青森市)の入所者自治会長石川勝夫さん(62)も「旧優生保護法の犠牲者は、過去に置き去りにされてしまった」と語る。「ハンセン病患者と同様、陰に隠れて生きなければならない日々を歩んできたのだと思う。過ちは償い、間違いは正されなければならない」
 旧優生保護法で15歳時に不妊手術を強制された宮城県の60代女性による国賠訴訟の提起は、母体保護法に変わった1996年以降も放置された不条理を白日の下にさらした。1月の提訴をきっかけに、過去の清算へと向かう大きなうねりが起きている。

<超党派議連発足>
 宮城県議会は今月16日、強制手術の責任を国に問う意見書を全会一致で可決した。「優生思想で国民が著しい人権侵害を受けた」「過去の反省に立ち解決策を実現すべきだ」と断じた同様の意見書可決がその後、全国の地方議会で相次ぐ。
 旧優生保護法を議員立法で制定した国会も重い腰を上げた。今月6日、救済の在り方を検討する超党派の議員連盟が発足し、自民、公明両党も議員立法による救済策検討の作業部会を設置。実態調査を拒み続けてきた政府も実施方針に転換した。
 「自治体議員を含めたネットワークを作り、海外の先例やハンセン病患者への補償例を参考に早期救済を目指す」。議連事務局長を務める福島瑞穂参院議員(社民党)は力を込める。
 75年まで精神薄弱などを理由に約6万3000人の優生手術が強制されたスウェーデンでは政府が97年に調査委員会を設け、99年に補償法が成立。裁判官が審査する患者補償委員会を設け、被害者1人につき約200万円を補償した。
 救済を求める提訴の動きは、全国的な広がりを見せる。原告女性の弁護団長の新里宏二弁護士(仙台弁護士会)は「訴訟提起は当事者の負担が大きい。救済措置は和解仲介手続き(ADR)のような仕組みにして、行政的な手続きの中で司法的な解決を進める形が望ましい」と話す。


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2018年03月28日水曜日


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