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<食味に懸ける 山形米戦略’18>第3部(下)突破口/業務用にらみ品種開発

多くのブランド銘柄を誕生させた県水田農業試験場。はえぬきの後継として有力視される山形142号の開発が進む=鶴岡市藤島

 2018年産からの生産調整(減反)廃止に向け、山形県が進めてきた食味最優先のブランド戦略は見直しを迫られている。日本穀物検定協会(穀検)の17年産米食味ランキングで、主力品種「はえぬき」は「特A」奪還を果たせなかった。県や指導機関はランキングに依存したイメージづくりから、より市場動向を意識した戦略にかじを切ろうと動き始めている。(山形総局・宮崎伸一)

 鶴岡市藤島の山形県水田農業試験場。高級ブランド米「つや姫」や主力の「はえぬき」など多くの県オリジナル品種を生み出し、米どころ山形の歴史を支えてきた。
 その試験機関が取り組んでいるのが、はえぬきの後継として有望視される新品種の開発だ。

<生産者の期待大>
 「山形142号」。2018年産から本格販売される県産米新品種「雪若丸」と「山形122号」を交配した。
 何よりも期待されるのはその収穫量の多さ。業務用米として引き合いの強い、はえぬきをしのぐ。
 しっかりした粒と歯応えのある食感も雪若丸から受け継いでおり、中食・外食用市場に新風を起こす可能性を秘める。
 「山形142号は開発途上の品種。デビューできるかどうかはこれからの調査次第」。担当者は慎重に言葉を選んで説明する。
 だが、生産団体などの期待は早くも膨らむ。関係者は「多収穫の業務用品種は数多くあるが、山形の土壌や気候に合わせて開発される県オリジナル品種は別格だ」と力を込める。
 農林水産省によると、16〜17年のコメの販売割合は業務用が39%で、前年より2ポイント増加。需要はさらに伸びると予想される。
 背景には、全国の産地が食味の良さやブランドイメージを競って高値販売を狙う中、生産が家庭用米に偏り、業務用米が不足している実態がある。

<実需重視 鮮明に>
 大泉一貫・宮城大名誉教授(農業経営学)は「過当競争の家庭用米より、需要が伸びている業務用米の生産に本腰を入れるべきだ」と提言。作業時期の異なる多収品種を作付け、機材を最大限効率的に使うなどすれば「1俵(60キロ)1万円程度でも採算が取れる」と強調する。
 農水省によると、県産はえぬきは毎年、業務用米市場で宮城県産「ひとめぼれ」、栃木県産「コシヒカリ」とトップシェアを争い、この3銘柄で販売量の2割超を占める。
 専門誌「月刊食糧ジャーナル」の鶴田裕編集部長は「はえぬきの作付けを増やすことでも、業務用米市場で山形米の優位は維持できる。はえぬきには10アール当たり12俵程度を生産しても良い食味を保てる能力がある」と指摘する。
 県は今後も市場や生産現場のニーズに合わせた品種開発に力を入れる方針。3月には県農業総合研究センター(山形市)に種子調整保管施設が完成し、より精度の高い研究ができる環境が整った。
 白田洋一農林部長は県議会2月定例会の答弁で「業務用、輸出用として期待される収量の多い品種の開発を継続する」と強調し、実需重視の姿勢を鮮明にしている。


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2018年03月29日木曜日


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