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<おらほの学校>(上)学習支援 意欲を高め大学進学増

開所した志翔学舎で講師(左)に質問する生徒

 東日本大震災で被災した宮城県南三陸町は、人口減少対策の要として、昨年から町内唯一の高校である県立の志津川高(生徒237人)の支援に乗り出した。県内で初めてとなる公営塾「志翔学舎」の設立を後押しし、生徒数の確保を目指す。1年目の取り組みの成果と課題を追った。
(南三陸支局・古賀佑美)

◎志津川高・公営塾の1年

<マンツーマンで>
 3月中旬の放課後。志津川高内の合宿施設で開かれている志翔学舎に続々と生徒が集まった。
 「ここに入るのはスピーク?スピークス?」「うーん…」。英語の動詞の語尾変化につまずいていた1年生を、講師がマンツーマンで指導していた。
 「中学の範囲から復習し、生徒が分かるまで何度も教えている。理解できれば少しずつ勉強が楽しくなり、自信も付く」と講師の一人。中学の学び直しから小論文といった受験対策まで指導する。
 志翔学舎は2017年6月に同校同窓会が設立。震災後に町内の中学校で学習支援をしてきたNPO法人「キッズドア」(東京)が運営し、町が費用を全額出す。平日の午後9時まで開き、多い月で延べ400人以上の生徒が利用する。
 15年の国勢調査によると、町の人口は1万2370で震災前の10年比の減少率は29.0%。子育て世代の流出が顕著で、同期間で志津川高の生徒は4割減った。
 深刻なのは町外の高校への流出だ。県は03年度、地域連携型中高一貫教育を導入し、募集定員の9割を同町の志津川、歌津の両中学校から募る。だが、16年度に両中学を卒業した生徒のうち、同校に入学したのは半数にとどまる。
 医療系の仕事を目指す町内の中学2年生は「進学するなら家から遠くても佐沼(登米市)か気仙沼に行きたい」と打ち明ける。

<取り組みを発信>
 町は16月11月、志津川高校魅力化推進懇談会を発足。町内の学校長、企業や保護者の代表が名を連ねる。町が中学生と保護者から志津川高への要望を聞いたところ、半数が学習支援と回答。町内には都市部のような学習塾はなく、公営塾の設置を決めた。
 志翔学舎から初の卒業生が出た今春、現役の15人が4年制大学に進学する。昨年の10人に比べて1.5倍になった。山内松吾校長は「夜まで勉強できる環境が整ったことが大きい。意欲的な生徒が増えた」と手応えを語る。
 ただ、入学希望者の増加にはいたっていない。新年度の新入生は定員120人に対し63人。このうち連携先の二つの中学校からの入学者は55人で、進学率はいまだ5割のままだ。佐藤仁町長は「一朝一夕に効果は出ない。中学生に志翔学舎の取り組みを発信していく」と述べた。

[公営塾]自治体が設置または支援する学習塾。主に郡部で高校の魅力を高めて生徒数を増やし、地域の活性化を目指す狙い。学習支援のNPO法人「キッズドア」(東京)によると、全国で約20カ所ある。先行事例は島根県の離島にある隠岐島前高。


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2018年03月30日金曜日


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