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<閖上津波訴訟>災害時の公助責任追及届かず 遺族側の主張ことごとく退ける

津波で行方不明の乳児の母親は記者会見で「勝ち負けじゃなく、命を守るための判決がほしかった」と語った=30日午後、仙台市青葉区の仙台弁護士会館

 名取市閖上地区の津波犠牲者を巡る訴訟の判決で、仙台地裁は30日、災害時の公助責任を追及した遺族の主張をことごとく退けた。東日本大震災当日に故障して鳴らず、用をなさなかった防災行政無線の不備や、地域防災計画で定めた広報車出動を見送った不作為も、震災前後の状況を考慮し、法的責任は問えないと判断した。
 「亡くした大切な家族の命を、せめて将来の防災の教訓にしてほしいとの気持ちで訴訟を続けてきた。絶望感しかない」。判決後に記者会見した遺族はこう語り、涙ぐんだ。
 遺族側は無線の故障について、公の営造物の設置や管理に不備があった場合の賠償責任を定める国家賠償法2条の適用を主張。一般的に道路や河川などの整備不良事故を対象とする同条の枠組みで、故障予測ができたのに回避措置を講じなかった過失を訴えた。
 市の第三者検証委員会は報告書で、故障は無線親機内部への異物混入が原因と指摘。「開口部をカバーで覆うなどの対策ができたはずで、市の認識の甘さは猛省に値する」と批判した。
 判決は検証委の見解に沿う形で、無線の管理状況に「問題がなかったとは言えない」としたが、故障の予見可能性や死亡との因果関係を全面的に否定。広報車を出動させなかった点も合わせ、「津波情報が得られなくても自ら避難判断はできた」とする市側の主張を大筋で受け入れた。
 市は災害対策基本法が毎年の見直しを定める地域防災計画に関し、2008年を最後に改訂を放置していた。遺族弁護団の小野寺義象団長は「防災対策を怠った市全体の責任を問う立証活動をしてきたが、判決は何も言及せず、死亡との因果関係にも高い立証ハードルを課した。原告の思いを踏みにじる最悪の判決だ」と語気を強めた。
 判決について、岩手大地域防災研究センターの越野修三客員教授(危機管理学)は「市が震災前、住民の命を守るための最善の努力をしたとは到底言えない」と指摘。その上で「危機的な災害時は自分で身を守る意思が重要。行政に命を委ねてしまうような発想は危険で、行政と住民の初動対応に現実的な検討が求められる」と話した。


2018年03月31日土曜日


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