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<存廃のはざまで 秋田・岐路に立つ伝統工芸>(下)記録と伝承 一挙一動 映像で確実に

催しでアケビづる細工を実演する中川原さん=秋田県立博物館
アケビづる細工の制作工程を記録した映像の一場面(秋田県立博物館提供)

 秋田県内で進む人口減少は、伝統工芸品にも暗い影を落としている。職人が減っており、後継者がいないために廃業した工房もある。一方で、長年継承されてきた技を絶やすまいと、制作過程の記録などを通して存続に取り組む動きも出始めている。厳しい現状と向き合う姿を追った。(秋田総局・藤沢和久)

<文献ほぼ皆無>
 「材料のつるは乾燥させておけば何年でも持つ。霧吹きは使わず、水で一晩戻す」
 秋田市の秋田県立博物館で3月中旬にあったアケビづる細工の実演。職人の中川原信一さん(69)=横手市金沢中野=が、来館者約100人に作り方を説明した。
 博物館は2014年度、植物のつるや樹皮を使った「編組品(へんそひん)」の技術を伝承する取り組みを始めた。年1回のペースで制作を実演してもらい、映像に記録している。
 編組品の多くは自生する植物を使う。編み方は用途や素材に応じ、地域ごとに特色がある。口伝が中心で文献はほとんどない。
 学芸員の斉藤洋子さん(40)は「編組品には何百年と続く地域の知恵と文化、試行錯誤の成果が詰まっている」と説明する。
 中川原さんはアケビづる細工をなりわいとする最後の職人。1950年には24軒、29人の職人がいた秋田県仙南村(現美郷町)野際地区の技法を受け継いでいる。同地区出身で「名人」と言われた父十郎さん(故人)の下、中学生の頃から制作してきた。
 材料のミツバアケビは自ら採取する。雪の重みに耐えた枝はしなやかで、丈夫な籠ができる。底はこぼれにくく、縁は壊れにくいように編み方を変える。
 元々は山仕事に使う「しょいこ」などを作った。近年は籠の手提げバッグや状差しも手掛ける。
 年に数人来る弟子入り志願者に技術を伝えるが、後継者はいない。「朝から晩まで休みなく働いてやっと生計が立つ。これでは食べていけない」。中川原さんは技術を記録として残す博物館の取り組みに望みを託す。
 博物館は中川原さんの下ごしらえや編み方をビデオカメラで撮影し、約20分の映像にまとめた。要点にテロップを入れ、分かりやすく編集した。
 従来の記録は主に職人らに聞き取り、文章や写真で残していた。県内では89〜90年度、県教委が大規模に調査し、貴重な資料となっている。だが一挙一動までは書き切れず、「資料だけでは分からないことも多い」(斉藤さん)という。

<「分野広げる」>
 県内に伝統工芸の職人が常駐する公的な施設はなく、博物館の工芸部門が主に記録と伝承を担っている。これまでも研究している学芸員が講師となって解説や実演をする「博物館教室」を開くなど、技術の継承を目指してきた。
 中でも映像記録があり、職人に実演してもらう編組品分野は一歩先を進んでいる。斉藤さんは「消滅の危機にひんした緊急性の高いものから記録している。今後、他の分野にも広げていきたい」と話す。


関連ページ: 秋田 社会

2018年03月31日土曜日


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