広域のニュース

地域に貢献輝く足跡 東北の国立大定年退職教授 大滝精一教授、斎藤忠夫教授に聞く

[おおたき・せいいち]52年長野県出身。東北大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専修大助教授、東北大経済学部教授を経て99年から現職。11〜14年経済学研究科長。河北新報社東北再生委員会専門委員を務めた。
[さいとう・ただお]52年東京都出身。75年東北大農学部卒。協同乳業勤務を経て東北大大学院農学研究科博士課程修了。東北大農学部助教授を経て、01年から現職。アジア乳酸菌学会連合会長、日本酪農科学会会長などを務める。

 東北の国立7大学で研究と教育に尽力した教授が31日、定年を迎える。東北大大学院経済学研究科の大滝精一教授は経営学の知識と人脈を生かし、東日本大震災からの復興に取り組んだ。農学研究科の斎藤忠夫教授は牛乳と乳製品の機能特性を解明した。2人が長年の研究生活を振り返った。

◎知識と人脈復興に尽力/東北大大学院経済学研究科 大滝精一教授(65)経営政策論

 東北の企業、NPOの振興に心血を注ぎ、行政の審議会委員も多く引き受けた。「経営学は単なる金もうけの学問ではなく、その本質はさまざまな組織に役立つ」と強調する。
 東北大に移って間もない1988年、経営者団体「東北ニュービジネス協議会」が創設された。準備に奔走し、東北各地を巡ったことが原点。「出会ったリーダー全員から学ばせてもらった。東日本大震災では組織トップの神髄を見た」
 アイリスオーヤマの大山健太郎社長と付き合いが長く、被災地再生のために経営者が設立した「東北未来創造イニシアティブ」(2012〜17年)などで共に復興の音頭を取った。
 97年に発足した宮城県内のNPOを支える「せんだい・みやぎNPOセンター」の設立に尽力し、99年から代表理事を務める。センターへの寄付金を原資に、被災地支援事業を助成する「地域創造基金さなぶり」と、人材育成に取り組む「みやぎ連携復興センター」が独立。さなぶりの助成総額は約16億円に上り、新しい資金の流れを作った。
 「私自身が震災復興に貢献したことはわずかだが経済界、NPO、行政という三つのセクターをつなげられた」と手応えを語る。
 実家は長野県岡谷市の商店。東北大経済学部に進んだのも本来は家業に生かすためで、家族は大学院進学を猛反対したという。
 退任後はNPO法人「アイ・エス・エル(ISL)」(東京)が8月に開設する経営大学院の副学長に就く。多くの役職を退き、活動拠点を関東に移すが「できる限り東北に足を運びたい」と話す。

◎乳製品の機能特性解明/東北大大学院農学研究科 斎藤忠夫教授(65)畜産物利用学

 乳酸菌とビフィズス菌の機能特性の解明など、牛乳・乳製品の研究に打ち込んだ。ヨーグルトとチーズの専門家として世界的に知られ、テレビ出演や講演依頼は引きも切らない。
 「毎年入ってくる学生たちと研究に取り組み、楽しい教員生活だった」。講義で学生にチーズを振る舞い続けた。最終年度の購入費は8万円にもなった。
 東京の下町で生まれ育った。食への関心が高く農学研究が盛んな北大を志すも、北海道を海外と言い張る家族に反対され、東北大に進んだ。受験日に泊まった寮で仙台人の温かさに触れ、寮長の誘いで今の研究室を選んだ。「縁を大切にしてきた」と振り返る。
 修士課程でウシの常乳に含まれるタンパク質「カッパ−カゼイン」の糖鎖構造を解析して初めて化学式を決めたが、論文発表でフランスの研究チームに先を越されてしまった。敗北感が原動力となり、博士課程の初乳の糖鎖研究で「世界初」を奪還した。
 1日当たり3度または三つの乳製品を取る「3−A−Day」を提唱・実践する。朝食は母直伝の特製ヨーグルトドリンク、昼食はチーズのみ。牛乳に換算すると、毎日1リットル以上を摂取する。「ほぼ一日も休まず研究室に顔を出した。病気一つしない健康な体は乳製品のおかげ」と笑う。
 退職後は酒類メーカー「オエノンホールディングス」(東京)の社外取締役として本社と八戸工場(八戸市)を行き来する。代表理事を務める、高齢者の困り事解決のNPO法人「仙台支え愛サポートセンター」(仙台市)の活動にも本腰を入れたいという。


関連ページ: 広域 社会

2018年03月31日土曜日


先頭に戻る