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女川原発5キロ圏、ヨウ素剤事前配布6割に満たず 10月に使用期限、一斉更新範囲が課題に

PAZ圏内の家庭に配られた安定ヨウ素剤。目に付きやすい冷蔵庫に保管する人が多い=石巻市

 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)での重大事故時に甲状腺被ばくを防ぐため、5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)の住民を対象にした安定ヨウ素剤の事前配布が進んでいない。女川町と石巻市が2016年以降に実施したが、受け取った住民は6割に満たない。安定ヨウ素剤は今年10月に3年の使用期限を迎え、一斉更新が必要になる。避難時の被ばく対策の実効性が改めて問われている。

 国の指針に基づき、安定ヨウ素剤の事前配布の対象となったのは、5キロ圏で丸薬が服用できる3歳以上の両市町の約1000人。宮城県と両市町は16年から医師が立ち会って計17回の説明会を開いたが、受け取ったのは581人で全体の57%にとどまった。
 市町別の内訳は女川が60%、石巻が54%。女川は、高台移転団地が完成する前の竹浦行政区に配れなかったなど、東日本大震災も影響した。

<準PAZ結論まだ>
 今年10月の更新時期を前に、県と両市町は7月ごろから説明会を開き、配布していた古いヨウ素剤を回収し、新品と取り換える。今回から3歳未満の乳幼児にゼリー剤を配る。対象は両市町の計約1200人になる見通しだ。
 今回の更新で、事前配布の範囲も問い直される。5キロ圏を通らないと避難できない半島部や離島部など「準PAZ」の住民について、女川町は出島に配ったのに対し、石巻市は牡鹿半島南部の約2500人に配布していない。
 市は県や内閣府とつくる原子力防災協議会作業部会で、準PAZの住民への事前配布を認めるよう要望しているが、作業の繁雑さもあって結論は出ていない。
 半島南部に住む40代女性は「もしヨウ素剤が飲めずに事故が起きたら、甲状腺被ばくの恐怖を感じ続けるだろう」と訴える。
 東京電力福島第1原発事後、避難対策が必要になった半径5〜30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)はさらに対応が難しい。ヨウ素剤を備蓄する7市町が事故後に配る方針だが、約21万人の対象住民への配布時期や場所は決まっていない。

<「線引き意味ない」>
 原発が隣接する茨城県ひたちなか市は、5キロ圏を含む全市民に引換券を郵送し、薬局などでヨウ素剤を事前配布する。市の担当者は「福島の事故を踏まえても5キロで線を引くのは意味がない。事故後に混乱なく配るのは不可能」とみる。
 宮城県の担当者は「UPZの住民に事前配布する考えはない。いずれ全員への事前配布は困難で、事故発生後の対応を検討していく」と語る。
 市民団体「脱原発仙台市民会議」の篠原弘典共同代表は「放射性ヨウ素が飛んでからでは遅く、事前に説明した上で配布すべきだ。事前配布を受けることは原発の是非を改めて考える契機にもなる」と話す。

[安定ヨウ素剤]放射性を持たないヨウ素(ヨウ化カリウムなど)を含む薬剤。原発事故後に放射性ヨウ素による甲状腺被ばくを抑えるため、予防的に服用する。国の交付金で県が調達し、原発周辺自治体が管理する。服用量は13歳以上が丸薬2錠、3〜12歳が1錠で、3歳未満がゼリー剤。効果は服用から約24時間に限られ、服用のタイミングは国や自治体が指示する。ヨウ素や成分に過敏症の既往歴がある人は服用できない。


2018年04月08日日曜日


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