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<慰霊碑をたどる>8年目の被災地(4)12人の命 忘れぬために

慰霊花壇前で冥福を祈る田村孝行さん(右端)ら=2月11日

 東日本大震災の被災地に立つ慰霊碑やモニュメントは、訪れる人々の祈りを受け止めてきた。それらには一体、どんな願いが込められているのか。震災発生から8度目の春。碑を巡り、遺族や関係者の思いをたどる。(報道部・水野良将)

◎「二つの碑」宮城・女川町

 東日本大震災発生から6年11カ月となった2月11日は3連休の中日だった。宮城県女川町には町外から足を運ぶ人々の姿があった。
 町内にある七十七銀行女川支店跡地近くの高台にある慰霊花壇前。田村孝行さん(57)と妻弘美さん(55)が語り部を務める。夫妻は行員だった長男健太さん=当時(25)=を亡くした。
 田村さんが言う。「風景は様変わりしたけれど、ここが私たちの聖地なんです」。長野市から訪れた70代の女性らがうなずきながら、耳を傾けている。
 モニュメントには、スーツと制服を着た男女の行員がほほ笑む姿が描かれている。台座には「命を守るには高台へ行かねばならぬ」などの文字が刻まれる。
 支店では震災発生当時、支店長の指示で従業員ら13人が高さ約10メートルの屋上に避難。津波にのまれ、12人が死亡・行方不明になった。
 家族らは2012年6月、支店跡地に慰霊花壇を設置。かさ上げ工事に伴って15年1月に高台に移し、同3月にモニュメントを建立した。姉美智子さん=当時(54)=を亡くした丹野恵子さん(58)は「できれば支店があった場所にモニュメントを移したい」と望んでいる。

 一方、七十七銀行は月命日の今年1月11日、支店跡地から約350メートル内陸に再建した新店舗の敷地に慰霊碑を設置した。いつ来ても手を合わせられる場所として、駐車場の一角に配置したという。
 碑文は津波で支店に勤務していた12人の尊い命が失われたことに触れ、「あなたのこと、あの日のことを忘れない」「この悲しい出来事を忘れず、二度と繰り返されないことを誓い、『誓いの碑』を建立する」などと記す。12人の名は刻まれていない。
 銀行の担当者は「鎮魂と風化防止、防災強化という設置目的を碑文に表した。12家族にそれぞれの考えがあり、名前を入れてほしくないという方もいる。当行でできる精いっぱいの形で作った」と説明する。

 12人にはそれぞれの人生があった。高松祐子さん=当時(47)=と成田絵美さん=同(26)=はいまだに行方が分からない。2人の家族は潜水士の国家資格を取り、手掛かりを捜し求めて女川の海に潜る。
 田村さん夫妻は、慰霊花壇前に通い続ける。出会った人々に命の大切さや企業防災の向上を語り継ぐ。
 天国で息子と会った時、「あなたの命は大きな役目を果たした」と言えるように−。


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2018年04月10日火曜日


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