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<気仙沼市長選>港町復興途上(上)見えぬ未来 事業遅れ増す不安感

災害公営住宅の敷地内にある集会所で談笑する入居者=気仙沼市南郷

 任期満了に伴う気仙沼市長選は15日に告示(22日投開票)される。街に甚大な被害をもたらした東日本大震災から7年。コミュニティー再生や街のにぎわい創出、水産業の振興など取り組むべき課題は山積したままだ。復興途上にある港町はどこへ向かうのか。気仙沼市の今を探った。(気仙沼総局・大橋大介)

<孤立する高齢者>
 「この建物、風が強くて洗濯物が飛んじゃうのよ」
 「今日は○○さん来てないね。どうしたの?」
 80代の女性2人が雑談を楽しんでいた。向かい側では別の80代の女性が縫い物に集中している。
 2015年1月、気仙沼市に初めて完成した災害公営住宅「市営南郷住宅」。約160世帯が暮らす。住民がつくった手芸などを楽しむサークル「シェアサロンなごみ」のメンバーは毎週木曜日、敷地内にある集会所で交流を深めている。
 設立は15年10月。なじみの薄い住民同士の親睦を図る狙いだったが、交流の輪は思うように広がらない。
 20人で発足した会員数は現在十数人。住宅内にある別のサークルも会員の顔ぶれは変わらない。なごみの及川美和子代表(69)は「祭りがあっても出てくる人は一緒。顔が分からない高齢者も多い」と不安を口にする。
 市が整備した災害公営住宅に住む1938世帯のうち、高齢者の独居世帯は542と3割近くを占める。周囲との関わりを避け、部屋に閉じこもる孤立した高齢者が増えつつある。
 住民らの話によると南郷住宅では昨年1月、1人暮らしの70代の男性が誰にもみとられずに亡くなった。他にも1人で亡くなった高齢者は何人かいるという。
 住宅の自治会「南郷3区自治会」の藤原武寛会長(52)は「隣の人の名前を知らない住民もいる。チャイムを鳴らせば扉が開く関係づくりが必要だ」と強調する。

<新商店街 閑散と>
 3月に公表された県の復興に関する県民意識調査で、「復興を実感する」と答えた住民の割合は気仙沼・本吉地域が46.2%と県内最低だった。県平均より約10ポイント、最大被災地の石巻地域より約16ポイントも低い。復興の過程で、不安や不満を感じる住民が少なくないことをうかがわせる。
 市が約42ヘクタールの区画整理を進める鹿折地区。工事は事業期間などの変更が4度あり、土地の引き渡しの完了は当初予定より最大2年遅れ、19年度末までずれ込む見通しだ。
 地元商店主らは17年4月、震災前に鹿折地区にあった「かもめ通り商店街」を区画整理地内に復活させた。最盛期には約60店舗あったが今は9店舗にとどまる。周辺では宅地などの造成工事が続き、人通りは少ない。
 ある店の女性(69)は「一日中、お客が来ないこともある。売り上げは震災前の半分以下だ」と漏らす。
 商店街の通り沿いには今も空き地がある。出店を予定していた理髪店が鹿折での再開を諦め、別の地区に移ったためだ。事業の遅れがにぎわい創出を阻み、街づくりの歯車を狂わせる。
 商店街の佐川真一会長(63)は「街が完全に出来上がるまで、あと5年はかかるだろう。一歩ずつ階段を上るしかない」と自らに言い聞かせるように話した。


2018年04月13日金曜日


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