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<大川小・止まった刻>専門家2氏に聞く/遺族の知る権利尊重を 京都精華大教授 住友剛氏

住友剛(すみとも・つよし)関西大大学院博士後期課程単位取得退学。兵庫県川西市の子どもの人権オンブズパーソン調査相談専門員などを経て、2014年から現職。教育学。主な著書は「新しい学校事故・事件学」(子どもの風出版会)。神戸市出身。

 東日本大震災で児童と教職員計84人が犠牲になった石巻市大川小を巡り、学校管理下における事故検証の在り方が論議を呼んだ。有識者らによる事故検証委員会の設置を主導した文部科学省前事務次官の前川喜平氏(63)と、学校事故・事件に詳しい京都精華大の住友剛教授(48)に検証の実情や課題を聞いた。
(大川小事故取材班)

 −学校事故の遺族支援や遺族の「知る権利」をどう考えますか。
 「大川小事故の場合、専門家集団が遺族と対話しながら、5年、10年かけて調査研究する枠組みが必要だったのではないか。学校事故の調査研究と被害者支援を同時に進める仕組みが日本にはまだなく、検討する必要がある」
 「遺族は、わが子の生きていた最後の姿を知りたいと願う。これに積極的に応じていくことが遺族支援の出発点となる。しかし、その制度自体が未整備だ。子どもの安全に関する包括的な法律である学校保健安全法に、遺族の『知る権利』などを盛り込むべきだ」

 −大川小事故検証委の人選や事務局の選定についてどう思いますか。
 「遺族が一貫して求めているのは『空白の50分、なぜ校庭から動けなかったのか?』。学校の中での出来事なのに委員に学校の専門家は1人しかいない。もっと増やした方がよかった」

<責務は自治体に>
 「亡くなった子どもと教職員の記憶を継承し、同様の災害を防ぐ責務は石巻市と宮城県にある。自らの在り方を問うために調査・検証し、遺族と共に再発防止策を探る検証委にすべきだった。事務局は民間コンサルタントではなく、批判はあっても学校防災を担う自治体に置く方がよい」

 −行政の危機管理に求められる姿勢とは何ですか。
 「行政や学校は従来、提訴された際の対応を危機管理のメインに据えてきた面があるのではないか。本来、行政や学校にとって、子どもの命を守れなかったこと自体が危機のはずだ」

<専門家と勘違い>
 −検証委は「中立公正」や「ゼロベース」を掲げましたが、遺族は結果に納得していません。
 「遺族は知りたいという思いが切実だから猛勉強する。委員は自分を専門家と勘違いしているが、地域や学校、子どもについては遺族の方が詳しい。検証委は遺族の持つ知恵や情報を生かすべきところ、自分たちの思うゼロベースや中立公正にこだわりすぎたのではないか。中立公正、ゼロベース、専門性という言葉の内実を問う必要がある」

 −遺族が真相究明を求めて訴訟を提起せざるを得ない現状をどう考えますか。
 「訴訟が新たな対立をつくり出している側面はないのか。自治体側は訴状を見て言い訳を考えたり、時には荒唐無稽な主張をしたりする。その度に遺族は傷つく。金銭的な補償と責任者の処分を除き、できるだけ話し合いで決着すべきだ」

 −学校事故に「無過失責任」を適用すべきだとの意見がありますが。
 「遺族の『お金なんか要らないから、子どもを返して』という思いにどう向き合うか。わが子が戻らないなら、せめてこの悲しい出来事を機に世の中が変わってほしい。そう願う遺族の思いに早く気付くべきだ。無過失責任の話の前に学校や行政、専門家にはするべきことがある」


関連ページ: 宮城 社会 大川小

2018年04月21日土曜日


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