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<大川小・止まった刻>専門家2氏に聞く/事実認定、報告書が限度 前文部科学省事務次官・前川喜平氏

前川喜平(まえかわ・きへい)東大法学部卒。1979年、文部省(当時)入省。2013年の大川小事故検証委発足時は官房長兼子ども安全対策支援室長。16年6月に事務次官就任。17年1月退官。1986年9月から2年間、宮城県教委に出向。奈良県御所市出身。

 東日本大震災で児童と教職員計84人が犠牲になった石巻市大川小を巡り、学校管理下における事故検証の在り方が論議を呼んだ。有識者らによる事故検証委員会の設置を主導した文部科学省前事務次官の前川喜平氏(63)と、学校事故・事件に詳しい京都精華大の住友剛教授(48)に検証の実情や課題を聞いた。
(大川小事故取材班)

 −検証委の設置を文科省が主導した背景は。

<市への不信感大>
 「遺族から大臣宛てに『市の対応は非常に問題があり、文科省が指導してほしい』という手紙が届いた。遺族は市への不信感が大きかった。事情を聴けば聴くほど、文科省がかなり実質的に関わらないと事態が動かないと考えた」
 「東日本大震災時、学校管理下で最も多くの子どもの命が失われたのが大川小だ。大川小事故の検証抜きに、今後の学校防災は議論できないと思った」

 −委員の人選を巡り、遺族から異論が出ました。
 「委員は文科省が決めた。遺族の同意を丁寧に得ることを考え、委員から外した方もいた。遺族が推薦する委員は、中立性や客観性を確保する意味で検討しなかった。最終的に納得してもらえる態勢でスタートできたのではないか」

<法的責任 裁判で>
 −検証委は市教委や学校、教員の過失や法的責任を追及しませんでした。
 「検証の目的は、悲劇を繰り返さないための教訓を得て、今後の学校防災に役立てること。法的責任を追及すると、検証本来の目的が果たせなくなる。法的責任の追及は裁判でやることであり、検証委が踏み込むべきではない」

 −遺族は検証委の報告書に納得していません。
 「100パーセント納得してもらえるとは思っていなかった。法的責任は追及していないし、一部の遺族が考える事実にたどり着いていない」
 「事実関係はできるだけ丁寧に客観的に確認した。事実をねじ曲げたり、証拠があるのに事実認定しなかったりはしていない。残っている証拠や証言からは報告書が限度だった。教訓は引き出せたと思う」

 −教員の責任を認めた仙台地裁判決をどう受け止めましたか。
 「教員の過失認定は意外ではなかった。(津波を目撃してUターンし、高台避難を呼び掛けた)市広報車の問題は大きい。後知恵だが、学校に立ち寄り、『逃げなさい』と言っていればと思う。市と宮城県の控訴について、文科省はまったく相談にあずかっていない」

 −検証委の調査資料の保管先が決まらず、4年以上宙に浮いたままです。
 「市がコンサルタント会社に事務局の運営を委託した立場であり、本来は市が調査資料を保管するべきだ。コンサルは市が求めれば返すはずだ。市は『訴訟に影響がある』と言うかもしれないが、コンサルが返還を拒む理由はない」

 −学校管理下で起きた事故の補償の在り方をどう考えますか。
 「学校管理下で起きた事件事故や災害で身体や生命に損害が生じた場合、学校側の責任の有無を問わない無過失責任の考えに立って全て補償するべきだ。まだ文科省にいれば、制度化を進められたかもしれない」


関連ページ: 宮城 社会 大川小

2018年04月21日土曜日


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