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<大川小・争点を語る>(下)結果回避 事前防災検討不足か

米村滋人(よねむら・しげと)東京都生まれ。東大医学部を卒業後、東大病院勤務などを経て東大大学院法学政治学研究科修士課程修了。2005年から8年間、東北大大学院法学研究科で准教授を務めた。専門は民法。43歳。

◎東大大学院法学政治学研究科 米村滋人教授

 石巻市の大川小津波訴訟で、一審仙台地裁の審理は東日本大震災発生後に津波を予見できたかどうかが争点の中心だった。地裁判決は、津波襲来の約7分前に市の広報車が避難を呼び掛けた時点で具体的な危険を予見できたと判断。校舎近くの裏山に避難させなかった教員らに過失があるとして、児童らの死亡との因果関係を認定した。
 国家賠償法に基づく法的責任の認定には、公務員による「故意または過失」の特定に加え、過失行為と事故結果との因果関係の立証が必要となる。控訴審は事前防災が最大の争点で、過失判断は基本的に震災前の経過に絞られる。
 東大大学院法学政治学研究科の米村滋人教授(民法)は「学校と河川の近さなどを考慮して、万が一の津波避難場所を事前に決めていれば、迅速な避難で助かった可能性がある。控訴審判決は、危機管理マニュアルの内容が適切だったかどうかが重要なポイントになる」と話す。
 事前防災と事故との因果関係の判断は、行員ら12人が犠牲となった宮城県女川町の七十七銀行女川支店を巡る津波訴訟(最高裁で原告敗訴確定)でも争点の一つだった。確定判決は、事前に支店屋上を避難場所に加えたのは科学的知見に照らして合理性があるとし、マニュアルに従って屋上避難を決めた支店長の判断を巡る法的責任を否定した。
 支店は震災前に津波避難ビルの指定を受け、独自の被害想定で作成した災害対応プランの周知や津波避難訓練を実施していた。
 米村教授は「一定の情報収集を行い、慎重に検討した結果の防災対策であれば、内容が著しく不合理でない限り責任を問えないというのが裁判所の考え方。だが、大川小がマニュアル内容を作成する際、女川支店のような情報収集や避難先の検討をしたかは疑わしい」と言い切る。
 ただ、事前防災が主眼の過失判断の枠組みでは、因果関係の認定ハードルは高くなる。仮に高台避難を明記したマニュアルを整備していたとしても、実際に教員らが避難を判断できたかなど、不確定要素の検討が必要になるからだ。
 米村教授は「一般的に事故から時間的・物理的に離れた行為に過失が認定されると、過失行為がなければ結果を回避できたと言いにくくなる」と指摘。その上で「大川小事故は校庭で約50分間も待機した特殊性がある。適切にマニュアルを整備して平均的な避難行動を取れば、容易に事故を回避できる時間があった。マニュアル不備は事故という結果から近いところにある」とみる。
 学校の事前防災の是非を巡る司法判断は、控訴審判決が初めてとなる。「具体的な予見可能性がないから何もしないのでは、防災は成り立たないはずだ。抽象的な危険がある段階で、どの程度の対策が学校管理者に義務付けられるかが問われている」と判決を注視する。

 


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2018年04月22日日曜日


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