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福島・浪江町民の集団ADR打ち切り 県主導で早期救済を

被災者の早期救済に向けた福島県の役割などを指摘する馬奈木氏

 東京電力福島第1原発事故で、福島県浪江町民が集団で慰謝料増額を求めて申し立てた和解仲介手続き(ADR)が、東電の計6度の和解案拒否の末に打ち切られた。原発集団訴訟など被災者救済に関わる馬奈木厳太郎(いずたろう)弁護士(東京)は河北新報社の取材に「ADRには制度上の限界がある」と指摘。いち早い救済へ「県がイニシアチブを取るべきだ」と訴える。(聞き手は福島総局・柴崎吉敬)

◎馬奈木弁護士に聞く

 −東電は国に提出している特別事業計画で、和解案尊重の方針を示すが、今回は6度も拒否した。
 「審理中に亡くなる高齢の住民もいる。誓いを守らず救済を遅らせており、批判されて当然だろう」
 「東電は慰謝料増額について『(国の賠償基準の)中間指針を見直すことにつながりかねない』と懸念している。同種の訴訟でも『指針は合理的』と一貫して主張しており、和解案の徹底した拒否は目に見えていた」

 −速やかな解決がADRの目的のはずだ。
 「解決に当たる原子力損害賠償紛争解決センターは和解案を示し、(東電など)当事者を説得することはできても、受け入れを強制できない」
 「(被災者個々の事情を説得材料にできる)個別の営業損害などの賠償には向くが、(一律の賠償を求める)この種の申し立てを解決するには制度上の限界がある」

 −早期救済の方策は。
 「これまでの集団訴訟の判決は全て、指針を超える慰謝料を認定している。東電の主張は司法で一度たりとも認められていない。東電は『ノー』を突き付けられている。こうした事情を広く社会で共有し、東電の姿勢を改めさせる機運を盛り上げることが必要だ」

 −行政の対応は。
 「集団訴訟の判決は大半が国の責任を認めるとともに、避難区域にとどまらず福島県全域の被害を認定した。被災県全体の救済へ、県がイニシアチブを発揮すべきではないか」
 「県は『より実態に即した救済をせよ』と、国に対して(指針の見直しなどを)求めるべきだ。住民か、それとも国の側に向くのか。県のスタンスが問われている」


[浪江町民の集団ADR]町民約1万5000人が福島第1原発事故に伴う1人月額10万円の慰謝料を35万円に増額するよう東電に求めた。町が2013年5月、原子力損害賠償紛争解決センターに申し立て、センターは14年3月、上乗せ額月5万円の和解案を提示。東電は計6度拒否し、センターは18年4月、仲介手続きを打ち切った。町は町民の意向調査などを行い、集団提訴するかどうか判断する。


関連ページ: 福島 社会

2018年04月23日月曜日


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