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<大川小津波訴訟>「大変厳しい判決」石巻市長と宮城県知事、上告の明言避ける

控訴審判決を受け「大変厳しい結果」と述べる亀山市長

 石巻市大川小を巡る訴訟の仙台高裁判決を受け、亀山紘石巻市長と村井嘉浩宮城県知事は26日、「大変厳しい判決」と表情をこわばらせた。一審に続いて主張は退けられ、学校の組織的な過失を認める初判断を突き付けられた。上告方針など今後の対応を問う報道各社の問い掛けに「判決内容を把握していない」「しっかり精査する」と繰り返した。
 亀山市長は市役所で記者会見し、「大変厳しい結果と受け止めている」と手元の資料を読み上げた。「現時点で上告するかどうかは白紙の状態」とし、早期に判断する姿勢を示した。
 校長ら学校幹部と市教委の過失が認定されたことには「市と市教委の事前防災の取り組みが認められなかった」と不満をにじませつつ、今後の学校防災に関し「さらに強化する必要性が高まった」と語った。約1年半前の控訴判断を振り返り、「控訴したこと自体は間違っていない」と強調。自身の責任に関しては「判決内容を詳細に検討したい」とかわした。
 村井知事は県庁で報道各社の取材に答えた。終始険しい表情を崩さず、「裁判結果は大変厳しいと受け止めている。判決が出たばかりなので、しっかりと精査したい」と述べた。
 判決が、学校の危機管理マニュアルの改訂など事前防災の過失を認定した点には「人知を超える災害にどこまで対応できるのか、考えないといけない」と言葉を選んだ。マニュアルの改訂作業に関し「訓練で一歩ずつ進める方法が良かった。今回はそこまでの次元に至らなかった」と話した。上告などの対応を尋ねる質問には明言を避け、取材対応は約5分で終わった。

◎「不可能を強いるに近い」石巻市代理人弁護士の松坂氏

 仙台市内で記者会見した石巻市代理人の松坂英明弁護士は、市と宮城県の主張をことごとく退けた高裁判決を「被告に不可能を強いるに近い」と顔を紅潮させて批判した。
 判決は教職員が地域特性に合わせ、独自にハザードマップを検証する必要性を指摘。松坂氏は「これまでにない高度な安全配慮義務を教職員に求めている」と述べた。
 「(学校)現場は市が科学的・歴史的知見に基づいて作ったハザードマップを信用するしかなかった」と代弁し、「万が一に備えるという被災地からのメッセージとしては評価できるが、過去の事案(大川小津波事故)の責任を問うには厳しすぎる」と語った。
 判決が避難場所として700メートル以上離れた高台を適地とした点は「学校から距離があり、想定外だ」と反論。「児童が助かるには高台しかない。市側に過失があるとする高裁の『ストーリー』を完成させるため、高台を選んだのではないか」といぶかった。
 判決は、学校側に危機管理マニュアルの策定を義務付ける学校保健安全法を論拠とした。宮城県代理人の斉藤睦男弁護士は「法律が学校に課すのは努力義務にすぎない。今回指摘されたような具体的な義務が発生するかは疑問だ」と首をひねった。
 松坂氏は「津波予見性に関するこれまでの最高裁や高裁の判断枠組みに照らすと、相当の違和感がある」と話し、市と上告を検討する方針を示した。

◎高い防災水準要求 <東大大学院法学政治学研究科・米村滋人教授(民法)の話>
 事前防災の過誤を明確に判断し、学校と市教委の組織的な義務違反を肯定した点で画期的な判決だ。従来の津波訴訟と異なり、ハザードマップの浸水想定区域を予見可能性の基準とせず、相当踏み込んだ判断と言える。学校保健安全法が定める児童の安全確保義務を重視しており、今後の学校現場には一層高い防災水準が求められる。過失行為と事故回避の因果関係は、適切な危機管理マニュアル整備を前提に迅速な避難行動を仮定したもので、十分納得できる。

◎新判断枠組み示す <大阪市立大大学院法学研究科・高橋真教授(民法)の話>
 校長ら現場の管理職と指導的立場の市教委が児童の生命安全を守る目的を達成するため、組織的に結び付いて対応することを職務上の義務として、判決は強く求めた。学校管理下の事故を予防的観点で捉えて過失を認定し、新しい判断の枠組みを打ち出したと言える。特に安全の確保は自由裁量ではなく、危険を積極的に認知して必要な情報を収集・蓄積し、地域の実情に即した実効性のある体制を作る義務が学校と市教委にある点を明確にした意義は大きい。

◎従来の前提崩れた <静岡大防災総合センター・牛山素行教授(災害情報学)の話>
 ハザードマップの存在意義が問われ、従来の防災計画の前提が根底から崩された判断という印象だ。マップの想定は不確実性があり、最大想定をうのみにすべきではないとはいえ、一般的な捉え方とは思えない。防災計画を策定する上で基本情報となる浸水予想を、学校の管理者や市教委が防災知見を収集・蓄積し独自に検証する職務上の義務まで課した点に違和感がある。現場実務者の技能や育成の現状からすると、実現可能性に乏しい義務と言わざるを得ない。


関連ページ: 宮城 社会 大川小

2018年04月27日金曜日


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