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<災後に育つ>(上)混乱の影響 ストレス連鎖 ケア課題

読み聞かせの絵本に見入る保育園児。健やかな成長を支えるサポートが重要だ=石巻市内(写真と本文は関係ありません)

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の発生後、2011年度に生まれた子どもたちが今春、小学1年生になった。災後の混乱に見舞われた地域や家庭で育った児童らを、いかにケアするか。震災の風化が危惧される今、「あの日」の経験や古里をどう伝えるか。学校や子育て支援の現場から、7年を経た現状と課題を見つめる。(震災取材班)

<笑顔の奥に>
 「『家では自分を抑えてしまっているのかな』と感じさせる子が少なくない」。震災の津波で被災した宮城県沿岸部の保育園長は、あどけない笑顔の奥底に見え隠れするストレスを懸念する。
 園児は全員、震災後生まれ。大半の家庭が被災し、5歳以上の年長児や小学校に今春入学した11年度生まれの卒園児の多くは、プレハブの仮設住宅で赤ちゃん時代を過ごした。
 運動不足とみられたり、親のストレスの影響か集団に入りたがらないなどのケースがあるという。上の子が震災で犠牲になり、園に通う下の子に対する心配が強まってしまう親もいた。
 「子どもは少なからず被災の影響を受けて育っている」との見方を示す保育園長。現在も自宅再建を機に引っ越す園児が多く、環境変化は続く。保育士の確保が難しい中、昨年から園児の受け入れを減らしてきめ細かなケアに腐心する。

<不安伝わる>
 震災と原発事故から7年。「災後生まれ」が就学期を迎え、直接被災していない子どもの発達に及ぼした影響を指摘する声が相次ぐ。岩手県沿岸部の保育園長は「全て震災関連とは言い切れないが、混乱期に生まれた子は大人の顔色をうかがうような傾向があった」と振り返る。
 避難が長期化する福島県では「子どもの落ち着きがない」「頭が痛いと言って不登校になった」などの報告も寄せられている。
 県外避難した母親の交流会を開いているNPO法人ビーンズふくしま(福島市)で、子ども支援センターの事業長を務める三浦恵美里さん(41)は「被ばくに対する両親の意見の不一致などを子どもは敏感に感じ取っている」と語る。帰還後も「逃げた人だ」と言われて母親が孤立し、不安感が子に及ぶケースもある。
 岩手医科大などのチームが岩手、宮城、福島3県の沿岸被災地で11年度生まれの子どもを調査した結果、語彙(ごい)に半年程度の遅れがあり、情緒、行動上の問題が目立った。母親は3割強が精神面の不調を抱えていた。

<加配継続を>
 学校現場も「災後生まれ」へのケアの重要性を認識している。宮城県教委は本年度、沿岸部の小中学校3校で、教員らへの助言を担う主幹教諭に養護教諭の有資格者を充てた。
 被災3県などは、被災地に教員を多く配置する国の「復興加配」の長期継続を求める。国の手厚い支援が保証される復興期間の終わりが20年度に迫る中、福島県教委の担当者は「家庭環境を含めて落ち着きを取り戻すには、まだまだ時間が必要だ」と強調する。
 兵庫県立大大学院減災復興政策研究科の冨永良喜教授(臨床心理学)は、阪神大震災時に幼く、記憶が薄い子にも落ち着きがないなどの事例があったと指摘。「親への支援が今後も求められる。親自身が悩みを分かち合う場づくりなどが重要ではないか」と問題提起する。


2018年04月29日日曜日


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