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<災後に育つ>(中)防災の教訓 進む教員交代 伝承模索

今春着任した教員らが、旧荒浜小の被害、防災教育の取り組みを学んだ=仙台市若林区の七郷小

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の発生後、2011年度に生まれた子どもたちが今春、小学1年生になった。災後の混乱に見舞われた地域や家庭で育った児童らを、いかにケアするか。震災の風化が危惧される今、「あの日」の経験や古里をどう伝えるか。学校や子育て支援の現場から、7年を経た現状と課題を見つめる。(震災取材班)

<息のむ写真>
 津波に襲われた校舎、避難住民でごった返す体育館。生々しい被災直後の写真がスライドに映し出される。今春着任した10人ほどの教員が息をのんだ。
 仙台市若林区の七郷小。今月3日、東日本大震災後の学校の歩みを伝える転任教員向けの研修会が行われた。研究主任の加藤孝教諭(49)が「教訓を受け継ぐことは被災地の学校の使命。共に防災教育を考えていこう」と呼び掛けた。
 七郷小は震災時、1000人以上の避難者を受け入れ、被災して閉校した旧荒浜小と2016年4月に統合された。教員の世代交代が進み、震災時を知るのは統合時に荒浜小から移ってきた1人を残すのみ。経験を後世につなぐため研修などに力を入れる。
 小学校に今春入学した1年生は全員、11年4月以降の「災後生まれ」。震災の経験の乏しい教員が、震災を知らない子どもと向き合う段階に突入した。加藤教諭は「地域や中学校と連携し、上の世代とのつながりの中で学ぶ取り組みが大切になる」と実感する。
 着任間もない山本志帆講師(23)は震災時、青森県内の高校生だった。仙台沿岸部を襲った津波をテレビで見ていた。「いざという時、自分の身をどう守るか。勉強しながら伝えていきたい」と気を引き締める。

<地域枠を増>
 教員間で経験をいかに継承するか。宮城県教委は昨年の教員採用試験から、気仙沼市と南三陸町の小学校で10年間勤務する「地域枠」を新設した。今夏は石巻地方の枠も追加する。県教委教職員課の担当者は「地域に根差す教員を増やし、持続的な防災教育につなげたい」と狙いを話す。
 住民1000人以上が津波の犠牲になった釜石市。市は06年度から津波防災教育を実施し、内陸部から赴任する教員に避難などの研修も続ける。その成果は、市内の全児童生徒の99.8%に当たる2921人が無事避難した「釜石の出来事」として表れた。
 ただ、震災時と同じ学校に残る教員は本年度、市内で最も被害が大きかった鵜住居地区にある釜石東中の1人となった。宇夫方朋子教諭(40)は今月上旬、同校の全職員を前に当時の緊迫した様子を説明した。
 生徒がどこの斜面を駆け上がり、避難所でどう過ごし、学校再開の日を迎えたのか−。宇夫方教諭は「子どもがどんな気持ちでいるのかを知らなければ、寄り添うことなどできない」と強調。「異動まで経験を伝え続ける」と力を込めた。

<負担集中も>
 震災の経験者が限られる一方、伝えるべき対象は年を追って増える。現状では特定の教員に負担が集中しかねない。佐々木一成副校長(50)は「個人に寄り掛かるのではなく、被災地の内外や教員、児童生徒を問わず伝承する仕組みが今こそ必要だ」と指摘した。


2018年04月30日月曜日


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