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<大川小控訴審判決 3氏の見方>教員の多忙化解消急務/和光大准教授・制野俊弘氏

制野俊弘(せいの・としひろ)氏 宮城教育大大学院修了。東松島市鳴瀬二中在職時に被災。同市鳴瀬未来中教諭を経て2016年4月から現職。教育学。著書に「命と向き合う教室」(ポプラ社)。東松島市出身。52歳。

 石巻市大川小津波訴訟の控訴審判決は、事前の備えを放置した校長ら学校幹部と市教育委員会の組織的な過失を認め、それぞれに安全確保の義務を課した。求められる教育行政や教員の資質とは何か。教育専門家の3氏に判決への評価と、「学校の安全」の実現に向けた課題を聞いた。(大川小事故取材班)

 控訴審判決は、いざという時、学校側が地域住民の意向を乗り越えてでも「子どもの命を守る」ことを強く要請した。現場にとって非常に厳しい判断と言える。
 事前防災の実効性を担保するには、校長ら教員が高度な知識と経験を持っていなければならない。そのためには絶えざる研修が不可欠で、人的・財政的措置を講じる必要がある。
 学校側が身に付けた高度な知識や経験を地域住民と共有し、学校が「地域の防災センター」の役割を果たすことも求められる。
 だが、実現するには「学校の多忙化」という大きな関門がある。教員の業務量は既に限界を超えている。仕事の持ち帰りや土日出勤が当然視され、特に小学校の教員は朝から晩まで働きづめだ。
 「子どもの命を守り抜く学校」「命を真ん中に置いた学校・学級づくり」に取り組みたくても、物理的な時間も精神的な余裕も全くないのが現状だ。
 仮にマニュアルを精緻に作っても、「命を吹き込む」のは現場の教員たちだ。校長ら幹部と教員がじっくり膝を交え、「子どもの命」について話し合える時間の確保や、精神的なゆとりをどう保障するかも問われる。
 災害時、学校が臨機応変に判断を下せる体制が整っているかどうかも大きな課題だ。学校は教員独自の判断やワンマンプレーが極度に嫌われる世界で、教員の判断力は次第に鈍っていく。
 教員の考課システムが強化され、多くの学校で「思い切ってやってごらん」という風土が薄れている。教員は、「どうしますか」と校長にお伺いを立てる習性が染み付いている。
 教科書やマニュアル通りの授業を行い、及第点だけを目指す「事なかれ主義」が横行する学校ほど、災害時の危険度は増す。職員が堂々と意見を言える学校づくりが大切だ。
 今後はあらゆる教科や行事などを命という視点で総点検した上で、地域住民と防災についてじっくり話し合う環境整備を進めなければならない。それが、大川小の教訓を正しく引き継ぐ最善の道ではないか。
 大川小事故は現場の教員一人一人の問題ではない。硬直化した教育システムの問題点が露見したと捉えるべきだ。


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2018年04月30日月曜日


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