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<大川小控訴審判決 3氏の見方>閉鎖的教育行政改めて/元明治大教授・三上昭彦氏

三上昭彦(みかみ・あきひこ)氏 東大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。明治大元教授で2013年定年退職。日本教育学会、日本教育法学会などの理事、「季刊人間と教育」初代編集長などを歴任。教育行政学。主な著書に「教育委員会制度論」(エイデル研究所)。東京都出身。75歳。

 石巻市大川小津波訴訟の控訴審判決は、事前の備えを放置した校長ら学校幹部と市教育委員会の組織的な過失を認め、それぞれに安全確保の義務を課した。求められる教育行政や教員の資質とは何か。教育専門家の3氏に判決への評価と、「学校の安全」の実現に向けた課題を聞いた。(大川小事故取材班)

 仙台高裁は、子どもの生命や身体の安全を確保することが学校保健安全法上、教育委員会と学校の「根源的義務」だと認定した。災害が起きる前の時点で適切な対応・準備をし、安全確保の義務を果たさなければならないと示した点で踏み込んだ判断と言える。
 仙台地裁は被災7分前に初めて津波が予見できたとし、教員の避難誘導ミスを過失とした。だが、切羽詰まった状況で教員は正しく判断できただろうか。地裁の論旨には多くの問題が指摘されていた。
 高裁判決は「震災前」に着目し、市教委や学校の組織的な対策を吟味した。校長ら幹部が大川小の立地条件などを考慮した適切な危機管理マニュアルを作らず、市教委は提出された内容を点検・指導する義務を怠った、と認めた。
 安全を確保する「根源的義務」を果たすには、まず管理職と教職員に子どもの命と尊厳を守り切るための(1)子ども観(2)力量(3)資質−が必要となる。
 教員研修の在り方も改めて考えたい。噴火や地滑りなど、日本列島では災害が頻繁に起きている。全国共通のリスクと各学校が置かれた個々の特性について、教員は把握してほしい。
 学校は子どもを集団で預かる特殊な場所で、高い安全配慮義務が課されている。一方、現場は多忙だ。行政が防災研修などを行っても教職員一人一人にまで十分共有されていない現実がある。
 国を含めた教育行政は、こうした事情を踏まえて条件整備する必要がある。私たち教育に携わる専門家を含めた関係者も、より良い環境を追い求めていかなければならない。
 防災は教育行政だけではカバーできない。多様な災害から安全・確実に身を守るには、土木など一般行政部門との連携が非常に重要だ。
 判決は学校管理職や教職員が平均3年程度で異動する宮城県の人事政策にも触れ、「学校の実情を継続的に蓄積できる体制になっていない」と指摘した。学校も教委も閉鎖的で、地域に根ざした体制になっているとは言えない。上意下達の学校管理政策などをはじめ、教育行政全般の抜本的な改革が不可欠だろう。
 防災は教育学全体の中で、これまで非常に隅に位置付けられてきた。大川小事故が提起するさまざまな問題を受け止め、真摯(しんし)に対応していかなければならない。


関連ページ: 宮城 社会 大川小

2018年04月30日月曜日


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